土曜から梅雨入りと聞いていたけど朝起きてみたら晴天。昼までは天気がもつようなので神戸市西区にある雄岡山(おっこさん)・雌岡山(めっこさん)に行ってきました。
雄岡山(おっこさん)・雌岡山(めっこさん)は両山ともふるさと兵庫100山に選定されているのですが、超低山なので登山として行くと拍子抜けします。
ここは歴史や逸話そして地理を楽しむウォーキングと洒落込みましょう。
兵庫県楽農生活センターから雄岡山登山道入口
車は神戸市西区の兵庫県楽農生活センターに停めさせてもらいました。姫路から約30㎞。姫路バイパスを東へ走り、第二神明道路の手前で降りて北上。ナビに兵庫県楽農生活センターを入れれば迷うことはありません。
写真は兵庫県楽農生活センターに併設された酪農カフェ。兵庫県楽農生活センターにも雌岡山の登山口があるようなので写真の奥に見えるのが雌岡山で間違いないでしょう。
ここ兵庫県楽農生活センターは一般向けに親子農業体験とか野菜栽培体験とかいちご収穫体験ができるほ場が用意されているほか就農支援コースもあるみたい。一般にも開放された農業大学校といったところ。
一応、車を置いていいのか気になったので近くを歩いていたおじさんに聞いてみました。
立:雄岡山・雌岡山に登りに来たんですがここ車置いてて大丈夫ですかね?
お:駐車場広いし大丈夫やろ。
なんのおじさんか分からないしお墨付きをもらったわけでもありませんが、多少気が楽になったので駐車場の隅っこに車を置かせてもらって出発します。
今日は楽農生活センターから時計回りに雄岡山・雌岡山を回る予定。神出山田自転車道に乗っかれば雄岡山登山口に着くことは調べてあります。
さて、神出山田自転車道はどこかいな?と探すと、兵庫県楽農生活センターの真ん前の道が神出山田自転車道そのものなのでした。幸先がいい。
僕みたいな田舎者はね、”神戸市”なんて聞くと大都会を想像してしまうんですよ。
でも日本全国どこに行っても発展してるのは海際だけで、少し山に入ればこのような田園風景が広がります。
安心ですね。
この田園風景からは想像もつかないけれども、雌岡山のあるここ神出町(かんでちょう)には大きな川がなくて、その昔は近隣の村と水利を巡ってのいさかいがあったそうですよ。
それが淡山疎水により解決したとのこと。淡山疎水、興味があれば調べてみてください。
神出山田自転車道沿いの呉錦堂池にも歴史があるのですが割愛。
それにしてもこの神出山田自転車道が長い。田んぼの中を行くほぼ平坦な道なので疲れはしないんですけれども、兵庫県楽農生活センターから雄岡山の登山口まで約4㎞なんです。
お!雄岡山が見えた。雄岡山を右に感じながら神出山田自転車道で山すそを回り込んでいくと田園風景が消えて町に出てきます。県営住宅と思われる大きなアパート群を見つけたら右手に注目しておいた方が良いですよ。
楽農センター側から神出山田自転車道に乗っかって歩いてくると、この雄岡山登山道の看板見逃しちゃうんです。反対方向に立ってるんでね。僕なんかこの看板を通り越して、自転車道沿いに坂を下りて行って、「あー電車が走ってらーw」のタイミングで雄岡山から離れてる!って気が付いたくらいですもん。
高雄団地を登りなおして、本来4㎞で登山口に着くところを5㎞以上歩いちゃいました。皆さんは気を付けてくださいね。
ま、なんでも着けばOK。雄岡山行ってみよ!
雄岡山(おっこさん)
登山を期待すると雄岡山は簡単すぎて拍子抜けする。マジで。
雄岡山の登山道入口はここ。住宅街の裏の細い道を入っていきます。この先に分岐が2つあるけれども「雄岡山山頂→」の看板が出てますからそれに従えば無問題。
雄岡山の山頂までは写真のように整備された緩い登り道が続きます。
写真も1枚2枚しか撮ってない中、10分少々で雄岡山山頂に到着…
おい嘘だろ。もう山頂って。なんなら高雄団地のほうが登りがきつかったぞ。
仕方ない。山頂を楽しもう。
こちら雄岡山山頂にある雄岡神社(オッコウジンジャ)様、なりは小さいですが兵庫県神社庁に正式に登録されている神社です。主祭神は木花佐久屋比売命(コノハナサクヤヒメノミコト)とのこと。
コノハナサクヤヒメはニニギノミコト(=天照大御神の孫。九州は高千穂に天孫降臨したことで超有名ですよね。)の奥さんで、日本神話に登場する中で一番美しいとされる神様です。不細工な姉さんを一緒にめとればニニギノミコトも永遠の命を得られたのにーという神話を読まれたことがあるでしょう?
あの美人の妹さんの方です。
こちら雄岡山では雨乞いの儀式が行われてたとのこと。今もやってるのかなあ。
祭記事
兵庫県神社庁様より
早魃の年に、溜池が干あがって、水稲をはじめ農作物が枯死するようになると、百姓たちは神社に集まり、雨乞祈願の祭りを行ない、恐る恐る御祭神にクロベ(麦の黒稲)を塗り真黒にする。ご祭神が綺麗な女神であるため、早く墨を落とすために雨を降らすという素朴な信仰による。
なかなか素敵な儀式じゃないですか。大きな川のない神出町ではやっぱり水が大事だったってことね。
ちょいと横を見ると雄岡山山頂に一等三角点を発見しました。標高241.17m、雄岡山の一等三角点は基準点名も雄岡山。
近くの雌岡山の標高は249mだから、雌岡山の方がわずかに高いんですよね。どちらも平野部にあるので他所からの見通しも良いし、それならいっそ雌岡山が選点されそうなもんですが…40㎞メッシュ網に雄岡山が奇麗にかかったかのかなあ。
これは後から雌岡山に行って分かりました。
雌岡山山頂には歴史ある神社があるからなのでした。
さて、雄岡山山頂からの景色。左手に明石大橋が見えます。あれ?
自分、今、神戸市を歩いてるはずなのに
左手に明石海峡大橋が見えてる?
じゃあ正面に見えてるのは明石の街?
俺なんか方向感覚狂ってる?
と地理が頭に入ってないので見えてる景色が分かりません。
こちらは雌岡山で出会ったおじさんの解説でクリアできましたので後述します。
赤土の道を下り雄岡山山頂を後にしました。
雄岡山は本当に低山で、下道途中から少年野球の子供の声が聞こえてきます。あとイノシシの掘り返し跡も発見。六甲もイノシシが出るっていうし町が近くてもちょいと山に入ればどこでも一緒か。
雄岡山から雌岡山へ
雄岡山を降りてきました。
雄岡山下山口から雌岡山登山口までは何もなければ2㎞といったところですが、この先には道標らしい道標がなく結構迷いました。
雄岡山下山口を降りて車道に出たら方向的には雌岡山は分かります。だって楽農センター方向に戻れば良いんですから。
迷うのはこの交差点。なんかどれでも楽農センターに行けちゃいそうに見えますが、ここは右です。
先ほどの交差点を右に曲がると金棒池沿いを歩くことになります。この金棒池を通り過ぎちゃいけない。池の途中に左に入っていく道があります。緑の門を見つけたらそれが雌岡山の登山口です。
おっと雌岡山登山口をご紹介する前に、金棒池には雄岡山と雌岡山にまつわる伝説があるのでこれを先にご紹介いたします。
看板を書き写しますね。
雄岡山と雌岡山が、金棒を芯にして土を盛って高さ比べをしていたところ雄岡山の金棒が折れて二つの山の間に刺さり、その跡が池になったという民話が残っています。そのために、雄岡山(標高241m)の方が雌岡山(標高249m)より8m低くなったようです。
だそうで。続きには弁慶説もあるのですが、僕はこの中折れ説を強く推したい。折れたってwww
男は頑張ってなんぼでしょ。
さて、雌岡山に行こう。
雌岡山(めっこさん)
二山目の雌岡山も登山を期待しちゃだめです。雄岡山も雌岡山も歴史や逸話や地理を楽しむところ。割り切りましょう。
金棒池から脇道に入ってきてすぐに雌岡山登山口らしきところを発見。これ正面から見たら絶対入っちゃいけないところに見えるでしょう?
隅っこに近畿自然道の道標が小さくあるんだけど、斜めから見ないと雌岡山に続いてる道って分からないの。山を登りに来て舗装路を登っていくなんて思わないから、これ完全に初見殺しだわ。
小さな道標に雌岡山を見つけたので舗装路を上がっていくんだけどいっこうに山道になりません。
そう言えば、神出山田自転車道の途中に「自転車でも上がれる雌岡山」みたいな看板があったのを思い出して、これはもうあれだなと覚悟を決めました。
ところでね。
雌岡山に入るとすぐにもの凄い獣臭を感じたんですよ。さっき雄岡山でイノシシの掘り返しを見てるわけで「これは近くにヤツが居るな!」と身構えたのですが、舗装路のすぐ傍に牛舎があるのでしたw
まあ、土地勘とかなくてもこのあたりの勘は狂ってなかったというか💩臭には敏感ということで💩💩💩
広い駐車場を経て舗装路分岐を登ればすぐに雌岡山山頂です。雌岡山の山頂には神出神社さんがあるので結論から言うと雌岡山は自転車でも車でも楽勝で登れる山なのでした。
誰でも上がれる山だけど歴史はあるぜ。神出神社さんに着く前に雄岡山と雌岡山の由来の看板を見つけたのでこれも書き残しておきます。
雄岡山と雌岡山と明石の由来
大きさも形も瓜二つの山で、その昔、遠くから眺めると子牛の角のように見えたことから、男牛、女牛と言われていたそうです。
神話によると、雄岡と雌岡は夫婦の神で男神の雄岡が小豆島の美人神に惚れたものですから、妻が止めるのも聞かずに鹿に乗り会いに行きました。その途中、淡路の漁師の弓に撃たれ、男神と鹿はともに海に沈んでしまいました。すると鹿はたちまち赤い石になり、それが明石の名称の起こりとも言われています。
やたら男・女・美人が出てくる土地柄なんですね。
そういうの嫌いじゃないぜ。
ここで雄岡山がなぜおっこさんで、雌岡山がなぜめっこさんなのかもひも解いておきましょう。
こちらは神出町公式の「神出町の歴史」から。
神出の東方にある二つの山は、西から見ると二つのコブのように見えます。可愛らしい子牛の角のように見えます。子牛のことを「べご」といいましたから、二つの山に男牛(おご)・女牛(めご)と名づけました。右にある山を男牛山、左にある山を女牛山としました。
神出町の歴史
その後、おごさん・めごさんは(立石注.現地別看板からの補足ではその後「雄子尾」「雌子尾」となり、さらに)言いにくいので「っ」を入れて「おっごさん」「めっごさん」と言うようになりました。さらに、言葉に濁りが出ていて言いにくいので、現在の「雄岡山」「雌岡山」と書くようになりました。
ここには美人は出てきませんでしたが、山の名前、その理由が分かってスッキリです。
そうこうしてるうちに雌岡山山頂の神出神社様に到着。
うむ、なんと格式高い神社様でしょう。
神出神社様の御祀神は素戔嗚命(スサノオ)、奇稲田姫命(クシナダヒメ)、大己貴命(オオナムチ)とのこと。クシナダヒメはスサノオの奥さんでヤマタノオロチ退治のときに櫛になってスサノオの頭についてた神様。これは分かりやすい。
そもそも神出とは素戔嗚命(スサノオ)、奇稲田姫命(クシナダヒメ)の二神の間に多くの神様が生まれたから神出ずる(かみいずる)町ということで神出と付いたらしいです。
神出神社の由緒を見てみます。
神出神社
鎮座地:神戸市垂水区神出町東字天王山1180
祭神:素戔嗚命、奇稲田姫命、大己貴命
由緒:この地に二山がある。東を雄岡山(241米)、西を雌岡山(249米)古くから信仰の対象とされている。神代に素戔嗚命、奇稲田姫命の二神がこの雌岡山に降臨され薬草を採取して住民の病苦を救い、農耕を指導された。二神の間に多くの神々がお生まれになり、そのうち大己貴命はこの地でご誕生されたという。このことからこの地を神出と言うようになった。降る大同四年平城天皇諸国巡幸のときこの地にたちよられ、神代の古事をしのび三柱の神を勧請祭祀された。これが神出神社のおこりである。
二神がこの地を救ったのは分かりました。問題は己貴命(オオナムチ)。オオナムチは出雲神話でいう大国主命なんですけれども、オオナムチがスサノオの子なのは日本書紀、古事記だと六代目孫になり、出雲風土記だとスサノオの娘(スセリビメ)の旦那です。ここ神出は日本書紀説をとってるということになります。
出雲国譲りは王家の正当性を高めるためにいろいろとゆがめられてるので記紀や風土記のどれが正しいのか誰にも分からないんだよね。神話の神様たちはあちこちで子供作りまくるし中折れもしないしw
そこに後世の編者の意向も入って無茶苦茶になってる。まあ、どの説も楽しいので地元の人の意向を尊重すればいいんですけどもね。
さて、神社の端っこにあった別看板を見ると「神出神社は元々は牛頭天王を祀っていた」とも書かれていました。スサノオとの習合かもしれませんが、地名に「天王山」と残ってるのはそのためと思われます。
いやー由緒書きだけでも見るところたくさん。
面白いわ。
さて、歴史は終了。次は地理でーすw
さて、雌岡山山頂から明石大橋が正面やや左に見えるのはなぜかという問題。土地勘のない僕にはさっぱり分かりません。ちなみに雄岡山からは完全に左手に見えました。僕は神戸市を歩いてるにもかかわらずです。
雌岡山山頂でくつろいでいたおいちゃんに聞いてみました。
立:こんちゃ。初めて来たんですけど地元の方ですか?
お:おう。なんでも聞いてw
このおっちゃんめっちゃめっちゃノリがいいwww
立:明石大橋ってあれ明石市じゃないんすか?
お:あれは神戸の垂水区やなあ
立:明石市から出てると思ってました
お:垂水の舞子からやなあ
立:あれ?垂水って神社の地名も垂水区になってましたよ?
お:西区は垂水区から分かれたからやな
立:???
お:こっから正面に見えるのが西区で、右手の海際が明石やね
立:西区は明石市を回り込んでる感じってことですか?
お:もともと明石郡神出町やからね
お:いまだ税務署も明石市やし
立:???
実際にはもっともっと聞いたのですが、分かったような分からないようななんで地図持ってきました。
そもそも僕ら田舎もんは神戸市って海際の都会と思ってるじゃないですか。それが実は山側まで入りこんだ結構いびつな形してるんです。なので今日は、特にいびつな神戸市西区の地理と歴史をここで学びます。
1.神戸市西区は明石市の北側にある。明石大橋は垂水区から淡路島にかかってるので西区の雌岡山から見れば橋が左手に見えるのは当たり前。OK、これで位置的な情報はクリアできました。
2.神出町はもともと明石郡神出町だったが昭和22年に神戸市垂水区に編入された。22年に編入された町村は57年に垂水区と切り離され、今は西区として再編されている。それで神出神社の由緒書きは垂水区だったわけね。
3.現神戸市は9区に分かれている。一方、国税事務管区は7つで神戸市西区は市をまたいで明石税務署の管区になっている(東灘区も芦屋管轄で市をまたぐ)。おっちゃんが言ってるのは国税事務管区の話で、市民税はとうぜん神戸市に入る。
田舎の県庁所在地に住んでると国税の管轄なんて意識したことなかったよ。国税に関しては西の端っこと東の端っこがまとめられてるのが興味深いね。
おいちゃんにお礼を言って下山開始。今日の思いはほぼ遂げたのであとは惰性。
先の分岐のところから裸石・姫石神社へ、細い階段を降りていきます。
神社は扉が閉まっていたのでご挨拶だけして石の方へ。
うーん、山口の麻羅観音みたいなちんこを期待してのですが、ティンコもマムコもなくすごく上品な感じ。原始信仰的なものなのかもしれませんね。とはいえ折角なので娘たちの安産を祈願しておきました。スポーンとな。
今日、唯一といっていい山道みたいなところ。左上に舗装路の雰囲気を感じるのでその内に道がつながるんでしょみたいな気楽な道だったけどね。
予想通り道がつながって日本標準時子午線へ向かいます。ここの道標も分かりづらくて少し登りかけたり、別の脇道に入ったりしました。まさか道を横切って正面に向かうだけで良いとは…
先の鳥居を出たらすぐ横に日本標準時子午線表示柱があります。サイドには東経135度の文字も。日本人なら一度は標準時子午線を踏みたいでしょ。だっておらが標準時ですもん。東経135度上にはいくつもこういう記念塔みたいなのがあるんと思いますが明石の洒落たパークよりもここが渋くていいなと僕は思いました。
前日(2024/6/21)が夏至だったこともあって個人的にはここに行けたのは嬉しかったなあ。いや黄道と標準時子午線の関係がないのは知ってるけど、単に嬉しかったの。
雄岡山(おっこさん)、雌岡山(めっこさん) 今日のルート
例によって迷いまくりの適当なルートですが何かのお役に立てれば。
県住からの雄岡山の入口と、金棒池近くの交差点と、雌岡山への分岐だけ覚えておいてください。
あとはどうにかなります。
さて、神が門戸を開いたのが神戸ならその神いずる町が神出町でした。今回はたくさん迷ったし登山として得られるところはなかったけれども、神出町から見る歴史と地理は面白かった。やっぱ現場に行けってことよね。
明石海峡大橋も見ることができたし、次はもっと歴史をさかのぼって淡路島に渡りたいな。イザナギとイザナミの二神が最初に作ったオノコロ島だもんね。
今日は次につながるウォーキングでした👍
そんじゃまた。