山よし!技よし!文化よし!加東市の三草山

山よし!技よし!文化よし!加東市の三草山

分県登山ガイド「兵庫県の山」を見ていると、駅から山に入って別の駅に降りるという縦走スタイルがスタンダードなようだ。公共交通機関の発達した都会の人にはそれが普通なんだろう。でも僕みたいな田舎者は、休日は車を飛ばして知らない街を楽しみ、周回路で山を楽しみたいんだよ。
だってさー

山よし!技よし!文化よし!加東市
山よし!技よし!文化よし!加東市

車で走ってると市町境界で「山よし!技よし!文化よし!」なんて素敵なキャッチコピーの街に出会えるんだぜ!っていうかなんだこれ。どういうことなん?

加東市三草山への行き方

加東市は姫路市の隣の隣、平成の大合併で社町・滝野町・東条町が合併して新たに発足した市。市名は加東郡の郡名に由来とのこと。人口は約4万人。姫路からの距離は40kmくらいで緑豊かな街だった。

三草山登山専用駐車場
三草山登山専用駐車場

三草山に入るなら三草山登山専用駐車場を目指すのがいい。無料だしトイレもある。

駐車場への行き方は簡単で、姫路からなら加東市の昭和池を目指して国道372号線をひた走るだけ。カーナビに入れるなら「ヤシロゴルフセンター」がベスト。国道372号線は加西アルプスに向かうときにも使う道なのでもう慣れっこだ。

三草山は人気の山らしく駐車場は9時半時点で写真のように満杯。神戸ナンバーで溢れてて「さすが人気の山は違うなー神戸からわざわざ来ちゃうんだー」と思ったらさ

国土交通省神戸運輸管理部兵庫県管轄区域マップ
国土交通省神戸運輸管理部兵庫県管轄区域マップ

兵庫県って「兵庫」ってナンバープレートは存在せず、姫路か神戸ナンバーしかないらしいよ(あと昔の「兵」ナンバーがわずかに存在)ざっくりとエリアで見ると播磨・但馬が姫路ナンバーで、丹波・摂津・淡路が神戸ナンバーなの。歴史的な国分けが今も生きてるってことでこれ凄くない?
山口県だと長門ナンバーと周防ナンバーとあと下関ナンバーだよみたいな。

昭和池
昭和池

駐車場の向こうに大きな堤体が見えるけどあれは昭和池。昭和池は兵庫県で一番大きなため池だそうです。
前も書いたけど兵庫県って日本で一番ため池が多い県でね、その中でも一番大きなため池がここにあるってだけでも三草山に来る理由になるじゃない。
ならないか 笑

ちなみにため池は背中に急峻な山を背負って平野が狭い地域に多いんです。中国、四国、九州地方がそれにあたりますね。
雨が降るとその8割はすぐに表層を流れて行っちゃう。残り2割が山に染みこんでジワリと流れ出た水が川になるわけですが、平野が狭いとせっかくの水がすぐに海に流れ出てしまうんですね。それじゃ作物が育たないので田んぼや畑のために水を貯めておこうというのがため池の役割。東北も中国地方と似たような地形だけど、東北地方にため池が少ないのは残雪のおかげです。雪解け水があるからため池が必要ない。ため池というのは暖かい地方に特有の構造物なんです。
ほら多少ため池に興味がわいたでしょ。

さて、三草山行くか。

山よし!三草山

山よし!技よし!文化よし!の加東市の真骨頂を見せてもらおうじゃないのと三草山に入ったら、これが本当に山よし!だったんです。人もよし!

三草山登山専用駐車場の入口からスタート
三草山登山専用駐車場の入口からスタート

三草山登山専用駐車場のトイレをお借りした後に、駐車場入口の道標に沿ってスタート。

手前の小山を迂回
手前の小山を迂回

いくつか道が枝分かれしてるんだけど、地図を見て「手前の小山を迂回」を理解してたので他の道には目もくれずとにかく手前の小山を迂回。
この小山は小山で岩が切り立って魅力的なんですけどね。

三草山登山

登山口から入りました
登山口から入りました

でこぼこのアスファルトが終わり、ここが登山口という明確な道標はなかったけれども対面から降りてくる人もいるのでこれしかないやろという道に入りました。取りつきはこんな感じ。

昭和池の手前で左に曲がり岩の道に入ります。

岩の道
岩の道

もうちょっと良い写真があったらよかったのだけど、三草山は近畿自然歩道にもなってて一部階段が用意されていたり、岩稜の部分には鎖も渡してあります。
鎖にはほとんど手をかけずに上がっていけます。

昭和池を振り返る
昭和池を振り返る

これが兵庫県最大のため池、昭和池。ちょうどこの辺りで休憩されていたお姉さまに加東市とその周辺についてお話を伺うことができました。

姉:あれが雄岡山(おっこさん)であっちが雌岡山(めっこさん)、そこから左に六甲山系も見えますね。こっちは千ヶ峰。向こうに尖ってるのは七種山で…

山にもめっちゃ詳しい。北アルプスもやる御年七十歳の大ベテランさんでした。御見それしました。

天辺に高い木があるのが三草山
天辺に高い木があるのが三草山
その右は稜線下りが続く
その右は稜線下りが続く

天辺に高い木があるのが三草山で「昔はもっと高い木があったんだけど誰かが切っちゃったの」とか、その右は稜線下りが続くとか、他にも地元のお話が楽しく15分くらい立ち話ししちゃいました。
播磨(摂津か?)の人はねえ、ほんと親切。山口から来たって言うと懇切丁寧に色んなことを教えてくれるの。声も大きくてうれしい。

一つ目のピークから
一つ目のピークから

お礼を言って別れた後、ゆるい岩稜を登って一つ目のピークを越えたところからの景色。緑の山に白い道。いいねー次はあれを登るのかー。

ゆるゆるの岩稜をテンポよく登っていくと自分が強くなったようでつい笑みがこぼれます。

今登ってきた道を振り返ってみる
今登ってきた道を振り返ってみる

ね、こんなん見たら笑顔になるに決まってるじゃないですか。

二つ目のピークから
二つ目のピークから

次はあれか。今日は緩く登ろうと思ってたのになんか早足になって前の人に追いついてしまいました。

三つ目のピークへ
三つ目のピークへ

全体的に鎖がなくても登っていけます。おじちゃんを抜く前に今来た道を振り返ってみました。

今登ってきた道を振り返ってみる
今登ってきた道を振り返ってみる

三草山へはこんな感じで高度を上げていきます。楽しいなあ。

三つ目のピークの手前で休憩されたおじちゃんに挨拶して先に行かせてもらいました。
さて、あそこに見える高い木が三草山のてっぺんだな。

三つ目のピークから
三つ目のピークから

もう大して登りもないだろうと勝手に予想していたのですが、ほんのちょっとだけ下って登って、そしたら三草山の山頂です。

三草山山頂キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
三草山山頂キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

三草山山頂

さすが山よし!の加東市。

三草山山頂 423.9m
三草山山頂 423.9m
三草山の二等三角点
三草山の二等三角点
三草山神社
三草山神社

こうやって写真を撮るといかにも山らしい山頂なんですけど、実は三草山はけっこう公園化されてましてね。

方位盤もベンチもあるよ
方位盤もベンチもあるよ

ベンチも方位盤もあります。周りをまるっと山に囲まれてるような加東市ですが、その中でも三草山は市民の皆さんに親しまれてる山ということなのかもしれません。

近本ロード&辰己ロード
近本ロード&辰己ロード

今登ってきた道、近本ロードというらしいです。先のベテラン姉さんも言ってましたが阪神の近本選手は旧社町の社高校出身で、この三草山を登って足腰を鍛えていたそうです。辰己選手についてはあまり熱く語っていなかったので分かりませんw

三草山月例登山スタンプ
三草山月例登山スタンプ

さらに毎月変わる三草山月例登山スタンプ。地元の方には12か月分の枠がある台紙が配られ、1年分スタンプが溜まると表彰状がもらえるそうです。「昔は景品もあったんだけど…」とベテラン姉さんがおっしゃってましたが、そこは財政との兼ね合いがね…
でも健康増進のうまいやり方だと思いますよ。

中継器も歴史の碑もある
中継器も歴史の碑もある

ちょっとごちゃごちゃしてるけど「山よし!」の意気込みは伝わりました。
やるね加東市!

三草山下山

木立の中をゆるふわの下山を想像していたら、ちょっと登ってはドバっと下る感じの下山でした。それでも、the 稜線みたいなところや昭和池からの景色がよくて下山も大満足の山行でしたよ。

鹿野登山口でいいよね
鹿野登山口でいいよね

下り始めて最初の分岐。車を停めた昭和池って言葉が道標に出てこないので若干不安になりますが、鹿野登山口方向が3.1kmなのでたぶんこっちで良いんだろうなと適当に進みます。

いきなり下り
いきなり下り

先の道標を過ぎると「木立の中をゆるふわで」があっさりと否定されます 笑
岩の上に葉っぱが乗ってて気を抜くと滑ってこけそうな下り。
前を行くお嬢さん方もこわごわな感じです。

稜線歩き開始
稜線歩き開始

先の下りを終えて小山を登りなおすと稜線歩きらしい気持ちのいい道が始まりました。この時点で昭和池は右手。昭和池を遠くに山々の稜線を巡って下っていく感じです。写真は一山越えたところで、この白く開けた場所は麓からもよく見えるので目印になります。

ああ、そうだ。写真の正面にゴルフ場が見えますがベテラン姉さんが「加東市は日本で一番ゴルフ場がある街なのよ」とおっしゃってました。ほんとかな。緑豊かな街です。

The 稜線
The 稜線

3つ4つと小山が続きます。この辺りに天狗岩というのがあるそうなのですが地図も見ずに快適に歩を進めていたので見逃しました。次があるのか分かりませんが天狗岩は見ておきたかったなあ。

Y字路
Y字路
小さい地図
小さい地図

「昭和池・登山口・頂上」とだけ描かれた小さな地図のあるY字路。ここはちょっと迷わせる。

まず「頂上」に向かうのでないことは誰でも分かります。次に「昭和池」うんまあ昭和池も分るんだけれどももうちょっと稜線を行けそうにも感じるんだよね。そして次の選択肢が「登山口」いや、登山口って日本中に死ぬほどあると思うんだよ。もしかしたら昭和池の登山口かもしれないじゃん。

なんですけど、稜線を歩いてる途中に出会ったおじ様と立ち話をしてて「どこから登ったの?」「昭和池の専用駐車場です」「ならY字路は右だよ。」と言われたのを思い出しました。

ここだったか。よしここは昭和池方向だな。

沢を降りていきます
沢を降りていきます

昭和池方向に向かうと稜線歩きは終了。滑りそうな急坂を降り、雑木林に入り、枯れ沢沿いの道を行きます。木陰が涼しい。雑木林辺りからピンテも現れるので道迷いもなく安心です。

昭和池に降りてきました
昭和池に降りてきました

沢があれば湖があるよなとというわけで行き着く先は昭和池です。まあ道標にも書いてあったし当たり前なんですけど。

鹿野P|東屋P
鹿野P|東屋P

鹿野って書かれても地名を知らないのでなにがどっちだか分りません。が、方向的にも昭和池の周りを巡って駐車場に戻れるんだろうと東屋P方向をチョイス。この先は湖畔のハイキングコースみたいなもんでした。

昭和池から三草山
昭和池から三草山

今歩いてきた山を丸々振り返ることができるのは嬉しいですね。写真正面が三草山。今日は左から入って3つ4つ越えて三草山の山頂に着き、右に5つくらい越えて昭和池まで下ってきました。短いけど楽しい山だったなあ。なんだかこれで終わりだと思うともったいない気もする。

三草山専用駐車場
三草山登山専用駐車場

今日のルート

三草山今日のルート
三草山今日のルート

三草山専用駐車場入口から小山を避ければあとは道なり。この山では左周りは急登コースと呼ばれるらしいけど緑に映える白い岩の道がただただ気持ちいい。
三草山の山頂は割と公園っぽくてでも市民に親しまれてる山なんだろうなと感じた。
下りは、アップダウンも多いしむしろこっちから登る方がきついんじゃないかと思う。
コースの終盤、昭和池の畔にむき出しの岩盤があってそこから振り返る三草山が本当に良い。
座り込んで10分くらい山眺めてた。まあ煙草吸ってたとも言うんだけど。

距離は6㎞ちょいだけど本当に良い山でした。山よし!

文化よし!三草山

今日の主題は「山よし!技よし!文化よし!」で山よし!は上で書いたので残るのは2つ。まずは文化よし!を片付けよう。文化よし!というか歴史よし!なんだけど。

山頂にある「三草山城址」の碑
山頂にある「三草山城址」の碑

三草山城址の碑から抜粋します。

三草山は播磨平野の北東隅にあり、山麓をはしる街道は、古くから、播磨と丹波を結び京の都への要路であった。
寿永三年二月、平家追討のため、源九郎義経の率いる一万余騎は、丹波小野原の里に布陣し、夜半、民家や山野に火を放ち、三草三里の山中を駆け抜け、一挙に平家の陣に突入した。三草山の西の山口に陣取る小松三位中将資盛、左中将有盛など平家一門七千余騎は不意の夜討ちに弓矢を取るいとまもなく、もろくも屋島をさして敗走していった。これが世にいう「三草合戦」と「平家物語」などの伝えるところである。(後略)

三草山城址

この碑は勝者よりに書かれてる気もしますが、平家物語と言えば悲哀の安徳天皇ですよ。赤間関の入水は涙なしには語れない。

安徳天皇は平清盛の外孫で1歳2ヶ月にして即位。その際に平清盛は後白河法皇を幽閉し自分が院政を敷こうとしたわけです。まあ無茶な話ですよね。

そんなことは許すまじと木曽義仲が入京し、平家一門は安徳天皇と三種の神器をかかえ都落ち。大宰府を経て屋島に落ち着くことになりました。この屋島は山口県の周防大島ではなく香川県高松市の屋島です。
たしか2年くらいは平穏に暮らせたんじゃなかったかな。

瀬戸内をまとめ力を盛り返した平家は没落した義仲の領地摂津へと軍を進めますが、源頼朝の弟、範頼・義経にやられます。有名なのが一ノ谷の戦いでこちらの三草合戦は一ノ谷の戦いの前哨戦にあたるようです。

三草合戦で負け、一ノ谷で負け、これが屋島の戦いにつながっていくのですが、その間に三種の神器もないまま後鳥羽天皇が即位してしまいます。天皇としての証である三種の神器をなんとしても奪還せよと源氏に命が下るわけで、これが壇之浦の戦い、安徳天皇の入水につながります。

で、ここからあまりメジャーでない話。西走する平家の屋島の戦いと壇之浦の戦いの間に、実は山口県の柳井市あたりで池の浦の戦いというのがあったんです。室津半島の東側です。

海での戦いからかろうじて難を逃れた安徳天皇は山を登って逃げ延びます。その時の年齢は6歳くらい。皇尊(すめらみこと)が山頂で休憩した山として室津半島には「皇座山」という山名が残っているのです。

まあ摂津の方であればみなさんご存じの話だと思うのですが、こんなに離れた地に、僕の故郷、山口県とつながる歴史があったことに驚きました。
さすが文化よし!の三草山です。

技よし!の三草山

さあお待たせしました。最後に技よし!のお話です。どうにも技のところが分からなかったので、三草山から車で7分にお住いの加東市在住70年の大ベテランさんに伺いました。

立:加東市は山に囲まれてるんで山よし!は分かります
べ:そうですね
立:文化よし!もまあ市のキャッチフレーズとしてはありそうです
べ:ありがちですね
立:で、技よし!ってなんですか?
べ:なんですかねえ?なんでしょう?

逆に技よし!って何かを聞き返されてしまいましたよ。

色々と不思議発見。これだから車での移動はたまらないんだよなー。
兵庫県、おもしろ!

後日談

先日加東市に伺った際に観光案内所で色々伺いまして最後にるるぶを頂きました。
加東市の技それは「山田錦を愛情いっぱいにおいしくおいしく育てること」これです。
僕が決めました笑

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