周防大橋のたもとにある藤尾山の海岸線は、水晶の拾える海岸として鉱物マニアの間で密かな人気スポットなのだそうです。
GWの初日は雨で山にも入れなかったため、晴れ間の見え始めた14時くらいから藤尾山に水晶を拾いに行ってみました。
藤尾山の海岸で水晶探し
秋穂から周防大橋を渡るときに藤尾山に目をやると、中腹に比較的新し目な崩落の跡が見えました。
橋の途中の退避所に車を停めて写真を1枚。もしかしてあの下に入れるのかなあ。だとしたらかなり面白いぞ。
そもそも藤尾山の地元、山口市嘉川では藤尾山のことを水晶山(とかまんじゅう山)と呼んでいるらしく、こりゃ相当拾えるに違いないと期待は高まる一方です。
なんだ、崩落跡はフェンスがあって近づけないじゃないか。ダメだこりゃ orz…
藤尾山にはかつて吉南鉱山(きちなんこうざん)というタングステン鉱を採掘していた鉱山もあったようでして採掘後のガレが海岸に転がり込むのか、はたまた崩落跡から水晶が転がり込むのか、鉱物マニアでもない僕はそんなことを想像しながら水晶探しを始めました。
周防大橋の下に車を停めて海岸沿いを彷徨い歩くこと1時間、曇った石英や断面だけキラキラしている石英(これは結晶なので水晶と言えば水晶)はまま見つかるのですが、100人中100人が想像するような水晶、つまり透明で美しい六角はまったく見つかりません。
まあ、思い付きでやってきたような僕がホイホイと水晶の塊を見つけられるような場所であれば、山口の新名所になってるはずですよね。
海岸を散歩できただけでも楽しかったと思ったその時!
真ん中の白い筋に注目です。花崗岩の隙間にまっすぐに石英が入っています。
あれ。僕の乏しい知識によれば、石英と水晶は同じ成分。時間をかけて結晶を作ったかどうかの差でしかないはず。
うーん、これは考え方を間違ってたかもしれないなあ。
水晶は上からコロコロ転がり落ちてくるんじゃなく、海際の花崗岩が侵食されて岩の中から出てきた水晶が海辺にコロリンというストーリーなのかもしれません。
となると、人気スポットの藤尾山下の水晶は取りつくされていて、僕のような素人が良質なものを手に入れるのはまず無理な話し。場替えが必要です。
どうせここいら一帯は同時代に形成されてるはずですし、幸いなことに花崗岩が海に張り出した海岸ならばいくつか知っています。
入りやすいところに行ってみることにしました。
秋穂某所で水晶探し
知ってる人は誰でも知ってる秋穂某所にやってきました。なんかねー、鉱山マニアの皆さんは慣例的に場所を明かさないみたいですよ。まあ、僕も胸張って明かしていい場所かどうかの判断が付かないのでここは某所ってことにしておきます。
それで、この海岸は先に行くともっと花崗岩の張り出しがあるんです。
なるほど。「海岸際の花崗岩が侵食されて岩の中から出てきた水晶が海辺にコロリンというストーリー」は当たりっぽいですね。
でも結晶はなさそうだなあ。
岩の上のあちこちに石英の塊が見えますが、結晶があったと思わしき場所には人工的な穴が空いています。その穴も岩の角が取れているので結構古そうです。
誰しも考えることは同じか。まあ、水晶を見つけたとしても持って帰るのは気がひける場所だしな。
ここはそれっぽい場所を見つけただけで満足ということにしておきましょう。
水晶探しの結果
結局、水晶は手に入りませんでしたが、推論して、仮説を立て、行動して、正しい(っぽい)結果を、短時間で得られたのはフィールドワーク(ネイチャーゲームかな)としては大成功でした。午後の3時間を使った遊びとしては十分満足のいくものです。
また水晶探しからは外れるのですが、今回、シーグラスが存外に海岸に落ちており簡単に手に入れられることを知りました。これは収穫です。なにか面白いことに使えるでしょう。
番外編「岩石の種類を調べてみた」
山を歩いていると岩や岸壁を見る機会が多くあり、毎回、あれは何だろうなあと思います。今回も岩のことが全く分からなかったので、ここで一般的な岩石の種類についてまとめ、ついでに山口県内の岩石の分布について私見を付記しておくことにします。もちろん、僕は学者でも鉱物マニアでもないので「山口県を歩くならこれくらい知ってれば大丈夫だろう」って程度のまとめです。
火成岩
火成岩はマグマが冷えて固まってできた岩石。浅い地下で固まった火山岩と深い所で固った深成岩がある。深成岩はゆっくりと冷えたために結晶が粒ぞろい。色の違いは二酸化ケイ素(SiO2)の量による。
分類 | 組織 | 白 | 灰色 | 黒 |
火山岩 | 斑状 | 流紋岩 | 安山岩 | 玄武岩 |
深成岩 | 粒状 | 花崗岩 | 閃緑岩 | 斑レイ岩 |
山口県における火成岩についての私見
花崗岩はピンクに黒やキラキラの粒が混じったお馴染みのやつ。山口県で瀬戸内を歩くときには「いい花崗岩だねえ」と言っておけば問題なさそうな気がします。萩から阿武方面を歩くときには火山岩の可能性があるので気を付けよう。
堆積岩
堆積岩は砂や泥、火山灰、生物の死骸などが堆積して、長い時間をかけて押し固められ岩石になったもの。
小 | 中 | 大 | 火山灰 | 放散虫 | サンゴや貝殻 |
泥岩 | 砂岩 | 礫岩 | 凝灰岩 | チャート | 石灰岩 |
山口県における堆積岩についての私見
美祢や秋吉台を歩くときには石灰岩が美しいと言っておけば概ね間違いないはず。泥岩・砂岩は海辺のぬめっとさらっとした岸壁に多そうなイメージ。礫岩はアスファルトっぽいけど見たことないなあ。
2021/08/01追記
礫岩 を見たことないと書きましたが、周防大島の嵩山にある岩屋権現様(巨石の下が洞窟になっていてそこに祠が祀られている)は正に礫岩かもしれません。入りやすい場所ですし、雰囲気も良いので、行って見てみる価値ありですよ。
変成岩
変成岩は堆積岩や火成岩が高温・高圧の条件下で組織が変化したもので、接触変成や広域変成といった種類がある。
- 接触変成岩はマグマで直接、熱変成を受けたもの。
- 広域変成岩は岩石が地下深部の高温高圧下にさらされ変成を受けたもの。縞状構造や剥離性など岩石に方向性が見られる。
山口県における変成岩についての私見
変成岩は素人には見分けがつかないので、山口県に関係ありそうなものだけピックアップしとこう。
接触変成岩は、山口県だと砂岩・泥岩からホルンフェルスが作られたらしい。やっぱり北部は難しいね。
広域変成岩。山口県南部は周防変成帯や領家変成帯に一部かかってるようなので太華山や黒髪島は要注意。
あと、寂地山から下りる犬戻の林道なんかは広域変成岩かも。岩壁の割れ方に方向性があって、崩れ落ちてる岩が粉っぽくて尖ってたんだよね。寂地峡側は花崗岩なのに山一つ越えるだけで岩の風景が全く違うなあって感じたんだけど、中国山地に属する山ってのはやっぱり形成過程が違うのかもね。これについては詳しい方、教えていただけると幸いです。
追記
この記事を訪れる方は水晶や綺麗な石やシーグラスを求めていらっしゃる方が多いようです。そうした方には美祢市化石館をお勧めしています。美祢市化石館1階の岩石コーナーも面白いですし、2階の虫入り琥珀も見ごたえがありますよ。入館料はなんと100円。山口県に住んでるなら、行かなきゃ損です。
追記です。「国内初、東アジア上部三畳系初のディキノドン類化石産出による追加調査のため一時閉鎖中です。」となっていた美祢市化石採集場も4月から一時閉鎖が解かれたと聞きます。化石も面白いかもなあ。いや、マニアじゃないよ。密じゃないところで遊びたいだけ。
電話確認して行ってね。
http://www.c-able.ne.jp/~naganobo/mfcf/index01.html
人に勧めるからにはまず確認と、電話してみたら再開未定とのことでした。
残念、ロックピックハンマー買おうと思ってたのに。