とっていいのは写真だけ、残していいのは足跡だけ
先月、山口県下松市の笠戸島家族旅行村にキャンプに出掛けた際に「とっていいのは写真だけ、残していいのは足跡だけ」という言葉を見かけた。
笠戸島家族旅行村のオートキャンプ場の背後には山を開いて作った散策コースがあり、その頂上付近にあんず・すもも園(星のゆめガルテン)があるのだが、そこの立て看板に書かれた言葉だった。
一緒に散策した友人と「なかなか上手いこと言うねえ(笑)」等と談笑していたのだが、今日になってこの言葉が外国語圏のツーリストの共通認識であることを知った。
Take nothing but pictures, leave nothing but footprints
どうやらアメリカの国立公園にはこの言葉が立て看板として設置してあるようで、上記のフレーズを基に検索するとたくさんの写真を見つけることが出来る。
そこで、そもそもの言葉の出どころはどこなんだろうと検索してみたら、forums.outdoorsmagic.comで議論されているのを見つけた。
1952年に設立されたメリーランド州のケイビングクラブ、ボルチモア洞窟のモットーに由来
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スカウト運動の創設者であるバーデン・パウエルからの引用
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1854年頃に非常に有名なスピーチをしたネイティブアメリカンのチーフシアトルからのもの
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「写真を撮って、足跡を残して」は、1988年にコロ川渓谷観光協会によってコロ川渓谷観光エコツーリズムプロモーションブックレットのマントラとして最初に発表されました。
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このように諸説あり本場アメリカでも定まっていないというのが本当のところのようだ。つまり誰が言ったかわからないくらい古く、ツーリストやネイチャリストに限らず一般の方々にも共通認識として擦り込まれている有名な言葉ということなのだろう。
C.W.ニコルさんの訃報
ところで今日、なぜ急に「とっていいのは写真だけ、残していいのは足跡だけ」という看板を思い出したのかというと、C.W.ニコルさんの訃報に接したからだ。
C.W.ニコルさんと「とっていいのは写真だけ、残していいのは足跡だけ」という言葉に関連性があるのかは正直分からない。分からないが、訃報に接した瞬間になぜか僕の頭の中で2つがリンクしたのだ。
彼はアウトドア料理の本をたくさん書いていたので、もしかしたらそこで見かけたのもしれないし、CMのセリフだったのかもしれないし、雑誌の記事だったのかもしれない。とにかく僕にはビビッと来たということ。
そう。C.W.ニコルさんの印象といえば、日本の森林を心配し里山を開拓してるネイチャリストで、昔からエッセイを書いてる人で、アウトドア料理の本も多く出していて、ひげ面ででっかい体で、でっかいナイフで豪快に野外料理する人。一般にはそんな感じだし、僕もそう思っていた。
だけど、去年、地元の常盤公園で開催されたUBE BINENNALEの彫刻の除幕式でお見かけしたときには、確かにスピーチに力がなかった。いや、それはスピーカーのセッティングのせいだったのかもしれないけれど。
それにしても昔から見聞きしている方だけに、なんだか近所のキャンパーが亡くなったような一抹の寂しさを感じる今日だ。
C.W.ニコルさん、安らかにお眠りください。「とっていいのは写真だけ、残していいのは足跡だけ」を日本に紹介したのは、きっとあなただったに違いないと、僕の心にだけ記憶しておきます。R.I.P.