椹野川水系最大の支流である仁保川が先日の大雨で氾濫危険水位を超過していた。超過の情報はネットで見ただけなので、現地がどうなっているのかが気になる。晴れた翌日に仁保川を遡ってみた。
地図で見る仁保川
最初に地図で仁保川の全体像をつかんでおく。
仁保川は長門峡と佐波川ダムの間の物見ヶ岳付近を源流とする。仁保の山々、白石山、真田ヶ岳、蕎麦ヶ岳、木戸山あたりから水を集めて下り、大内長野で直角に折れて、中央高校付近で問田川、椹野川と合流する。
色別標高図で見ると仁保川は谷あいに沿って流れているのが一目瞭然で、なるほどこれは水を集めるなあというのがよく分かる。
ちなみに上記の色別標高図では仁保川の右側にも大きな谷あいが見えるが、これは佐波川だ。
仁保川を遡上する
2021年8月15日に見たままを記録しておく。
中央高校から国道262号線まで
山口小郡秋穂線に架かる橋から上流を眺めた様子。右にちらっと見えるのは姫山で、その麓で仁保川は問田川と合流している。仁保川はこの橋で椹野川と合流するのでここが仁保川の終点となる。橋の袂には仁保川の碑が立っている。
ここからスタートする。
中央高校横の堰に降りて上流を撮ってみた。前日の大雨で草木が流されて堰に引っかかっている。この辺りまで水があったことが伺えるが、今はかなり引いてる様子。
ゆめタウン近くの御堀橋から上流を眺める。昨年、大雨で堰が壊れたところだ。
この御堀橋には水位計が設置されていて、ネットに上がってくる水位はここで取っているらしい。でも本当かなあ。この地点の護岸を見ても少々の雨では越水しそうもないのだけど。
仁保川のライブカメラ
ネットで検索すると仁保川にライブカメラがないなどというサイトがたくさん見受けられるが、仁保川にライブカメラはある! まったく、現場を見たこともない馬鹿サイトは、検索の邪魔になるので片っ端から削除して欲しいなあ。
御堀橋監視カメラ(右上の[最新]をクリックすると最新の情報を見ることができる)
http://y-bousai.pref.yamaguchi.lg.jp/citizen/water/kwl_camera.aspx?stncd=014&obsdt=202108171200
下市橋周辺監視カメラ(夜間に見るならこちら)
http://hytec-rivercam.japaneast.cloudapp.azure.com:8080/river
左の護岸は修復済みだが、真ん中の堤体は壊れたままのようだ。浅い川に剥き出しのテトラポットが異様な感じがする。
氷上橋から上流を眺めてみる。ここは十分な川幅があり氾濫しそうもない。川岸の植物も特に流された様子もない。
川沿いに自転車道が走っているが車は通れないので、一旦裏道に逃げてビッグの方向に向かう。
できるだけ川沿いに初めての道を走っていると、大内長野で仁保川が大きく曲がるところに出くわした。
写真の通り下流は川幅がかなり広く取られている。川の内側にせり出しているのは西方便山(鳳翩山ではなく方便山だ)横の小山。
下流に比べると上流側の川幅は狭い。カーブの外側の護岸があまり高くないので、先で流れが滞るとこの辺りは危険かもしれないなあ。
上記の写真を撮った場所で水位計を見つけた。御堀橋で水位を取ってるんじゃないのか?と疑問を残したままスルーしたが家に帰って調べてみたら分かった。
http://www.ohuchi-machizukuri.com/bousaicamera/
こちらは大内まちづくり協議会さんのページから。「大内地域を流れる仁保川と問田川に新たに簡易型水位計が2か所、監視カメラが1か所新設され、令和3年6月15日正午から計測情報が一般に公開されました。」とのこと。
上記のサイトに拠れば山口県の防災やまぐちサイトから簡易水位計のデータも見られるはずだが、昨日確認した時点では水位計の設置場所は分かるもののデータは載っていなかった。そういえば、アクセス過多で山口県の防災サイトが落ちたと新聞で読んだ気がする。今は一時的に情報を減らしてるのかも。
それにしても仁保川はかなり重点的に監視されているなあと思ったら、こんな県の資料を見つけてしまった。
https://www.pref.yamaguchi.lg.jp/cms/a18600/bousai/suiboukeikaku/apd1_23_2009020828104713.pdf
洪水予報区間は仁保病院から中央高校までの間に限定されてるようだ。なるほどなあ、それで赤や黄色の警報が付くのがその間だけなんだな。
もしかすると、下流の御堀橋水位計の計測値がネットに公開されているだけで、実際には大内長野あたりに氾濫の危険があるかどうかを判断しているのものかもしれないなあ。
国道262号線から道の駅仁保の郷まで
初めて見た仁保川の湾曲部から少しだけ上流に進むと国道262号にぶつかった。仁保川をまたぐ国道262には長野大橋がかかっている。長野大橋なんて名前は地元の人間にも分からないだろう。位置的にはホテルエスパシオのちょい下のところだ。
この先も川沿いに進みたかったが良い道が見つからず、結局県道26号線に出てきた。県道26号線はあっはっはから道の駅仁保の郷に向かう道で、自転車をやってる人なんかにはお馴染みの道だ。仁保川は徐々に県道26号に近づいてきて、最終的に仁保の郷あたりまで並走することになる。
県道26号線から仁保病院を見る。この辺りまでがYahoo天気予報なんかで氾濫危険水域のマークが着くところだ。
県道26号線沿いの仁保川はわりと川幅があり氾濫しそうな感じはない。
もうすぐ道の駅仁保の郷の交差点に着く少し手前に「いくぼはし」という橋が架かっているが、ここで仁保川は分岐(というか合流)している。
僕が知ってる限り左が本流で、右から入ってくる川は支流だと思うのだが、GoogleMapsを見ると左も右も仁保川の表記となっている。
そんな馬鹿な!間違った方を確認しようとまずは右に進むことにした。
道の駅仁保の郷から支流を攻める
右の川沿いを登って行く途中で、畑仕事のおばちゃんを見つけたので川の名前を尋ねると「これも仁保川って呼んでるねえ」とのことだった。
わざわざ爺ちゃんに聞きに行ってくれたおばちゃん、ありがとう。
もう少し進んだところで、庭いじりのおじさんに聞くと「これは坂本川だ」と答えてくれた。振り返ると川に井領橋が架かっており、反対の橋げたには確かに坂本川の看板がかかっていた。ありがとう、おじちゃん。
支流は仁保川ではなく坂本川と分かったので、これ以上進む必要はないのだが、余禄で支流も攻めてみることにした。
一貫野川は蕎麦ヶ岳や真田ヶ岳の間を流れている川だ。泉水原ゴルフ場の裏に一貫野藤が見られるところがあって写真はその場所。
最初に書いたが仁保川はとにかく仁保の山々から水を集めまくって流れている川で支流も多い。
どのくらいの支流があるか仁保川の水系を見てみたければ下記のページを探ると良い。
https://river.longseller.org/rc/3500360019.html
[他の河川データも自動表示]を押して地図を寄っていくと川の名前を見ることができる。地図は地理院地図が見やすくてお薦めだ。
この地図を知ったのは家に戻ってからだが、とにかく現場でもGoogleMapsの表記が間違っていることが分かったので道の駅まで戻ることにする。
道の駅仁保の郷から野谷方面へ
ここからはサクサクと。
道の駅から少し歩いて交差点へ。5月にはこの交差点から見る仁保川上流に、鯉のぼりが何十匹もはためく。よくニュースでも流れるのでお馴染みの光景だろう。
車に乗って再出発だ。交差点を右に折れ、野谷方面へと進む。
県道123号から下流を振り返るとKDDIのお皿が見える。これもお馴染みの光景だ。
途中、車を停めて仁保川にかかる橋に寄ってみた。大雨の翌日だというのにこの辺りの水は濁っていない。振り返ってみると、川の色が土色に変わるのは、大内長野の更に下流辺りからだった気がする。やはりあの辺りは土が削られているのだ。
先週、犬鳴の滝を見に狗鳴川を上ったが、その時に車を停めさせてもらったのがこの夢の椀プール。河川プールなんてのは山口市でも珍しいが、大雨の後でもあれだけ水が綺麗だから可能なのだろう。
県道123号と334号の分かれ道手前の橋までやってきた。ここから仁保川は3本に分かれる。写真は岩倉川で、3つの川の合流地点は田んぼの向こうなので見ることができなかった。
3本の川の内、仁保川本流は大原湖と書いてある県道123号を直進した方向に進むが、途中で県道とは別れて山奥に入っていくようだ。残念ながら大雨の翌日に山歩きをする勇気はない。
また県道123号の野谷峠を車で走のはちょいと遠慮したいのもある。野谷峠は以前、自転車で走ったことがあるが、車だと行き違いが難しいうえに熊に注意と書かれた看板があったりとなかなかなかワイルドな道だもの。道が崩れてたらUターンもできやしない。
なので、仁保川の源流を求める旅はここまで。
松柄峠は現在通行止め
123号線には進まなかったが、334号線でポンタ(やまぐちサッカー交流広場)まで遊びに行ってきた。帰りに引谷の白石山のそばを通って仁保に向かっていたら松柄峠は通行止めだってさ。
ずいぶん奥まで進まないと看板が出てこないんだもんなあ。まいったなあ。
追記:問田川の話
8月20日未明のゲリラ豪雨により、また仁保川が氾濫危険水位に達した。しかし実際に冠水したのは仁保川支流の問田川で、どうやら内水氾濫だったようだ。この時、ネットの情報として仁保川は真っ赤になっていたが、問田川についてはなにも情報が上がっていなかった。
うーむ、椹野川および仁保川は県指定の洪水予報河川に入っているけど、その支流については県・気象庁に連絡が行かないんだろうなあ。
というか、この洪水予報河川とは別に洪水浸水想定区域の指定というのがあって、どうもこれに載っている川には警報が出ている気がする。僕の勘違いかなあ。山口市でも昔は前田川とか九田川とか警報を聞かなかった気がするんだよなあ。
https://pref.yamaguchi.lg.jp/cms/a18600/bousai/201901190001.html
で、問田川の話に戻ると、今回、問田川沿いに建つ知り合いのクリニックが危うく床下浸水するところだった。内水氾濫だとすると基本的には川底を深くするしかないんだろうけど、警報は早めに欲しいよね。
問田川も然るべきところに(簡易じゃない)水位計測所を作って、洪水浸水想定区域の指定を受けたほうが良いんじゃないだろうか。実際、被害が出てるんだし。
記憶に残る近隣の水害を記録しておこう。
1999年9月23日 22年前 台風18号により宇部空港冠水
たまたま女房が旅行中で宇部空港に停めてた新車がパーになったのでこの水害をよく覚えている。台風が去った後に秋穂を走ってみたが、一面海のようになっていてびっくりした記憶もある。この年は被災+アルファで車を3台買い替えた。子供も生まれたばっかりできつかったなあ。
2009年9月21日 12年前 豪雨により防府で土石流発生
椹野川に流れ込めなくなった吉敷川の水がバックウォーターで溢れ、我が家も床下浸水になりかけた。家の前の道路が川のようになり渡ることも困難に。あと1時間降り続いていたらアウトだった。床下浸水の数は防府よりも山口の方が多かったのだと後で知った。
夜、TVを付けたら防府の勝坂で土石流が発生したと、全国版で流れていて驚いた。勝坂は半年くらい通れなかったが、代わりに高速道路が無料開放されて県の東に行く道は確保された。
2013年9月28日 08年前 豪雨により阿武川氾濫
豪雨は豪雨だったが、この雨は山口市街にはあまり影響がなかった。新聞で阿武川が氾濫したことを知る。阿東町から萩にかけて多くの家屋が浸水したほか、法面の崩壊、橋梁の流出など結構大きな被害が出ていた。
己に被害がなく近隣に大きな被害が出たのは初めてのことで、居ても立っても居られずボランティアで阿東町の片づけに行ってきた。氾濫した川の土砂は臭いことを初めて知った。この時は残暑も厳しく、汗だくになって作業したのを覚えている。
こうした記憶に比べると昨年(2020年)の雨は体感では大した量が降ってなかったため、仁保川の井堰が流されたと聞いて驚いた。
以降、大雨が降る度に仁保川が氾濫危険水位に近づくのをネットで見ていたので、今回、遡ってみようと思った次第。
そしてなぜ仁保川がすぐに黄色くそして赤くなるのか、今回の旅でわかった気がする。
やっぱり歩いてみて良かった。
1次情報は大事だね。
西方便山横の小山と書いた山は金成山(かなりやま)というようです。散歩コースが設置されていて山口県立育成学校の奥から入れるみたいです。山も良いけどちょっと川にも目覚めちゃいそう。