標高1,161.8m、山口県第3位の標高を誇る小五郎さんに行ってきました。寂地山を登った時のダメダメぶりが脳裏に浮かんで、ビビりながら登ったのですが、金山谷鉱山ルートという横入りルートの距離が思いのほか短くて拍子抜け。山頂で遊んできました。
その小五郎山、かつては宇佐ヶ岳と呼ばれていたそうです。最初に小五郎山の伝説から参りましょう。
小五郎山の伝説
小五郎山の伝説については「hikogの廿日市の歴史探訪」様より概要を抜粋させていただきます。
昔、美和に佐伯重氏という侍がいた。重氏は、六日市で一頭の子馬を買い龍の駒と名付けて大事に育てた。龍の駒は口から火を吹き一鞭で千里を走る名馬となった。
http://hikog.gokenin.com/sigeujitotatunokoma.html
やがて時の天皇にその噂が届き、馬を連れてくるよう命令が下ったが、愛馬と離れがたい重氏は身を隠す。
怒った朝廷は、重氏の子 小五郎を捕らえて京の四条河原で処刑してしまった。
宇佐ヶ岳山頂で息子が息絶えたことを知った重氏が下山しようと愛馬に一鞭をいれると、龍の駒も気落ちしていたか、かづらに前足をとられ主人とともに深い谷底に落ちてしまった。
我を通し駿馬を手元に置いたがために、最愛の息子や馬を失い自身も身を滅ぼしたというお話ですが、それにしても朝廷側もやり過ぎな感があります。どいつもこいつも酷い。地元の方が小五郎を哀れに思いその名を山に残してくれたことだけが唯一の救いですね。
まあ、そんな伝説を知ったのは山を降りて家に帰ってからでしてね、山頂では「遅いぞ!武蔵!」「小五郎破れたりー!」とかやって遊んじゃってました。ダメっすね。
そんな感じで今回も後輩の升井君と珍道中の始まりです。
小五郎山金山谷鉱山ルートの入り方
小五郎山金山谷鉱山ルートの駐車場に到着するまで、この道で合ってんのかなあと不安が付きまといましたので、後進のために記録を残しておきます。
駐車場まで
小五郎山金山谷鉱山ルートの入り方ですが、山口県側からですと岩国の道の駅ピュアラインにしきから長瀬峡方向を目指すと良いです。県道16号線を走っていると上記の看板が出てきますので、この交差点を看板通り長瀬峡の方に入っていきます。
小五郎山は南北に稜線、東西を谷に囲まれた単独峰です。僕らの歩いた金山谷鉱山ルートは西から山頂を目指す横入りのルートになります。
もう一つの向峠ルートは稜線歩き。向峠ルートの入口は県道16号で深谷PAを経由すると見つかりますが、県道16号は2つあるので地図読みに気を付けてくださいね。
さて、金山谷鉱山ルートの話。ガードレールのない深谷川左の道をずんずん進み、峠を越えて里に下りてくると、写真のようなめちゃめちゃ分かりやすい看板が出ています。これを右です。
右に曲がるとすぐに甲羅が谷橋があります。この橋が地図で検索できると一番説明が楽なのですが、”甲羅が谷橋”で検索に引っかからないんですよ。
現場で橋を渡るときに、こっちに進んでも道なんてないじゃんと思うかもしれませんが、ちゃんと看板があります。草で隠れてましたけど。
甲羅が谷橋を渡ったらすぐ左に入っていけば、小五郎山登山道駐車場に到着です。
今回、升井君のナビは完璧でした。
こちらが小五郎山金山谷鉱山ルートの駐車場。コンクリ道の脇が広場になっていまして、車は5~6台が停められそうです。
深谷川沿いの道や甲羅が谷橋を渡ってから駐車場までの草、駐車場の斜度と切り返しの幅を考えると、大きな車でくるのは避けたほうが良いかもしれません。
登山口まで
升井君が「れっつすたーてぃーん」と急かすので、早速、小五郎山に入ります。
駐車場から坂を上がるとダムがあります。もう少し上がると見えてきますが、このダムは3段式になってるようです。水量が豊富な山なようです。後ほど沢渡りも出てきます。
コンクリ道を上がっていくと下草の生えた広場になります。なんだか道がなさそうで不安になりますが、少し進むと看板があるので安心です。
この看板が登山口といってよいでしょう。内容を書き写しておきます。
この登山道は、地主の山本誉さんと登山愛好家有志の熱意によって2009(平成21)念4月に完成しました。
このルートには古来より銅や銀を採掘してきたと伝えられる鉱山跡があり、石見銀山と同様の手彫り坑道(間歩)が昔のままに残されています。
また鉱山に通った山道の石組みも登山道に残されています。さらに修験堂があったと伝えられる寺床や雪の中での厳しい生活が偲ばれるオンドル跡地など歴史がいっぱいです。
ツキノワグマの生息する豊かな広葉樹の大自然を歩きながら小五郎山の歴史探訪を楽しんでください。
だそうです。クマ?
小五郎山 金山谷鉱山ルート 登山
サクサク行きましょう。
小五郎山の取りつきは急
県内の小山は取りつきが緩く山頂付近が尖って急傾斜ということが多いのですが、さすが中国山地の一座、小五郎山はなんだか勝手が違います。
看板から入っていった平坦な道は下草だらけでした。先週、金峰山を歩いてきまして取りつきに似たような下草がアありましたのでまた蜘蛛の巣との格闘になるのかとゲンナリしましたが、ここを抜けた先の登山道はしっかりでした。
これがその登山道。よく踏まれてますし登りの時はいい道じゃーんと思うのですが、こぶし大のザレが道を覆っているので下りは石車に乗らないよう気をつけなければいけません。
実際、僕も升井君も登山口が近づいてからも何度も滑りこけそうになりましたもん。要注意です。
ザレが終わると整備された林の中を登っていくようになります。このあたりの傾斜はきつく、右に左にと本当に小さなつづら折りを上がっていくようになります。
僕らは谷側から登っているので林の向こうには常に景色が開けているのですが、この日は雲が厚く林の中はやや暗く感じました。
厳しい登りの途中に休憩所の看板が現れましたので(升井君はまだ全然元気なのですが)これ幸いと休憩を取りました。
県内3位の山を横入りしてショートカットするのですから急傾斜は覚悟の上なのですが、とは言え取りつきからきつ過ぎる。僕にとっては久々の1,000mオーバーで、春先の寂地山の悪夢が蘇りますので出来る限りの体力温存を図っておきたいのです。
ちなみにですが
「うわーキノコだよー!」とか言っては足を止め、写真を撮るふりをして休憩したのは秘密です。
いや、まあ、最近シイタケ栽培を始めた僕としてはキノコに興味津々なのも事実なんです。
どれが食べられるのか分からないし山のキノコは触りもしませんが。
植林帯を抜けるとクマザサが出てきました。
登山口の看板にツキノワグマについて触れてありましたが、こりゃさもありなんという感じ。前後に目を配り、たまにピッピッと笛を吹きながら進んでいきました。
あ、写真だけ見ると勘違いされそうなので一応書いておきますが、このルートは登山道が十分整備されていますので、最後まで藪漕ぎはありません。為念。
修験堂はルートを外れて登っていくので僕はスルー。升井君は少し上がって先を確認していましたが見えず仕舞とのこと。多分、あの岩の上とかにあるんだろうなあ。
展望台の看板までやってきました。
道の端にせり出した岩を展望台と呼んでいるようです。岩を見ると登るスパイダーマン升井君。御多分に漏れず登っていきますが「あんま景色ないっす」との報告。
僕は僕で展望台と聞くとヤッホーです。ここ、近くの木霊はすぐ帰ってきますが、遅れて返ってくる木霊が小さいので木霊鑑定士の僕としてはいまいちの場所でしたと報告しておきましょう。
展望台から4つの渡渉
ここまで下草、植林地帯、クマザサと植生の変化を見ながら急傾斜を上ってきましたが、ここからは山腹を回っていく比較的緩やかな道になります。途中4つの沢を渡ります。ちなみに渡渉ってのは沢を渡ることね。
最初に山肌を回っていくのですがその道が細いんですよ。下からは沢の音が響いてくるので、右にこけたら谷まで真っ逆さま。
兎に角、倒れるなら山側を合言葉に進みました。
比較的緩やかな登りで金山谷鉱山ルートの山肌を回っていくと大小4つの沢を渡るようになります。
上の写真が最初にぶつかる沢で、渡りながら下流を写したものですが、この日は水量も少なく足元も十分でした。
まさかこんな高い位置にこんな良い沢があるとは思っていなかったので大助かり。早速水浴びで頭と首を冷やしました。沢の水が冷たくて気持ち良い。
右に落ちたら死ぬぞーという崖を越えるとまた沢。寂地山の時も思ったけど、県の東側の中国山地の山は水量が豊富ですね。きっとこれらの水が集まって下のダムに流れ込んでいるのでしょう。
次は沢というより岩清水。岩の隙間から湧き出た水が岩肌を濡らしていました。
ここ、行きは慎重に渡ったのですが帰りはちょっと舐めてまして、僕はこの岩で片足を滑らせてしまいました。
両手でロープを握っていたので残りの足で体を支え事なきを得たのですが、背中から空中に飛び出した形になったのでちっとドキドキしました。
ロープが腐ってたら背中からダイブしてたかも。こわ!
ここは沢まで降りて渡渉する必要があります。写真を見るとすごい谷っぽく見えますがこいつは写真のマジックです。
実際は大した深さもありません(笑) でもタスケテーとか叫んで遊んでみます。
はい、この4つ目の沢を渡渉した先には小五郎山鉱山跡についての看板があります。看板は現地でじっくり読むとして、大事なことがあります。
ここからは沢を登ること!
看板があるもんでついその方向に進みたくなりますし、実際進めそうな道もあるのですが、そちら方向は間違いです。
沢に戻って辺りを見回すと、上流にピンクのリボンが見えます。登山道はそっちです。
後から見ると絶対に間違えそうもないんだけど、ここだけ引っかかったな。
看板にやられました。
頂上手前はめっちゃ滑る
沢を登って行くといよいよ山頂に近づきます。その前に…
沢を登って行くと坑道への分岐が2つありますが、僕ら残念ながら体力温存のため寄り道をしませんでした。この時は登山道の距離が短いなんて知らなかったもんでね。
分岐1の先が意外にしょぼくてまあ見なくても良いかと判断したところもあるのですが、分岐2の先には手掘りの穴があるという話なので次回は絶対見に行こうと思います。
分岐2の写真にケルンが見えますが、ここに積まれた石が青いんです。多分、銅を含んでいるんでしょうね。流石、鉱山跡と言われるだけあります。
こういう歴史と実態が紐づくのって嬉しいですよね。
沢から登る間はシダやコケを見ましたが、山頂近くなると再び熊笹が出てきます。この辺りの道はドロドロで滑りまくります。
どうにも滑って登れないところにはちゃんとロープが設置してあるのでありがたく使わせてもらいましょう。
ドロドロの急坂を上がりきると空が開けます。稜線に出たか―と思ったら、これ、山頂なんです。え?
1,000m越え、県内第3位の言葉にビビりまくって休憩多めで登って来たわけですが、このルート、駐車場から山頂までの距離が2.5kmしかないんです。
めっちゃ拍子抜けー。
小五郎山山頂
小五郎山の山頂は岩国方面に景色が開けていました。正面の山の上に白い建物がポチっと飛び出して見えるのですが、あれは多分、羅漢山の雨雲レーダーですね。
寂地山や右谷山、広島の冠山は写真の左手方向になりますが、そちらは林があってしっかり見えませんでした。残念。
山頂の馬鹿遊び
なんだかこのくらいしか思い浮かびませんでした。あとは大五郎!ちゃん!くらいかなあ。
小五郎山は三等でした。基準点名も小五郎。シンプルで良いですね。
小五郎山金山谷鉱山ルート
金山谷鉱山ルートの入口を示すために引きの地図にしておきます。
駐車場から山頂までの距離は、升井君のiPhone12だと往復5km、僕のiPhone6Sに至っては往復3.7kmの記録となりました。
地図を寄って見ると僕のログは直線的で、九十九折が端折られてるのでその差です。GPSの精度かリュックの奥に携帯を放り込んでおいたのでそのせいもあるかもしれません。
いずれにしても小五郎山金山谷鉱山ルートは距離が短いので少々坂がきつくても耐えられます。
クマがちょっと怖いけど沢は気持ちよかった。そんなルートでした。
最後にサンキューケムンパス
僕たちが小五郎山を登った2日前に、登山道に真新しいリボンを付けてくれた方がいらしたようです。
おかげでとても安心して歩けました。
サンキュー!ケムンパス!
4つ目の沢の看板のところも頼むぜ!
そう言えば、4つ目の沢の前で、山側のクマザサからバタバター!って音が聞こえてねマジでビビったよ。体が固まって動けなかったもん。
直後に鳥が飛び出して(たぶん、キジの雌だと思うんだけど)一直線に空に飛び出て行ったんだ。
いやー頭にクマがインプットされてたからコレ俺死んだと思ったわ。