6月の初旬、晴天のカルスト展望台で偶然、昔の彼女に出会った。
「2月以来だな。」
突然の再開に声も出ない彼女。
「夏服も似合うんだな。その帽子も。」
言葉をつないでも視線を合わせない彼女。
そうか。きっと近くに新しい彼氏がいるんだろう。
この時になってやっと二人の関係は終わってたんだと実感した。
「じゃあ、、、」
「また」という言葉はつなげられなかった。
固まったまま動かない彼女に言葉を残し、僕は踵を返した。
・
『男は振り返らないものだ。』そう言ったのは親父だったか爺さんだったか。僕は車に乗り込み、ドアを閉め、一呼吸ついてからキーをひねった。
あと一週もすれば梅雨だ。
「山でも歩くか…」エンジンの咆哮とともに息を吹き返したクーラーが、僕のつぶやきを後方に流していった。
了