前から目をつけていた青海島(おおみじま)の高山に単独行してきました。青海島は昔から長門市仙崎と橋で結ばれており、小学生の頃にはキャンプに連れて行ってもらったり、学生の頃には東端の通までドライブしてみたり、大人になってからは紫津浦に鯛を買いに行ったりと、僕にとっては沢山の思い出がある島です。
高山からの景色が素晴らしかったんだなあ。
青海島の高山への入り方
長門市街から波の橋立まで
青海島に行くのなら通常は長門市役所前からJR長門駅方向へ曲がるのだけど、山口県漁協湊魚市場まで出れば湾の向こうに青海島が見えるだろうとあえて直進してみた。
高山は青海島の端っこに位置する山なので、写真左側の高いほうの山に違いない。今日は中腹のキャンプ場まで車で乗りこむので山行自体は大したことはないはずだけど、こうして見るとキャンプ場にたどり着くまでが険しそうに見える。
折角なら通ったことのない道を走ってみたいと、湊魚市場を後にし、青海島を左に見ながら湾沿いの細い道を進んでいくと青海大橋の手前に出た。右に青海島観光所をチラ見しながら車が来ていないことを確認し左折。青く塗られた青海大橋を渡る。
Google Mapsで経路を確認した時にはもう少し先で曲がるものと思っていたのだけど、青海大橋を渡り、坂を降りた左の建屋に「青海島 高山オートキャンプ場」の看板を発見した。こんな手前を曲がるのかあと思いつつ左折。海沿いの道を行く。
ちょうど満潮時に当たったらしく、低い堤防の向こうに並ぶ漁船の位置が高い。なんだかのどかで良い風景だ。
言い忘れていたけど、高山を目指すなら「青海島 高山オートキャンプ場」をカーナビに入れればOK。まあ青海大橋下の角を曲がってからは一本道なので間違いようもないんだけれども。
ちなみに、僕は大抵の場合、県内移動でカーナビを使わない。家を出る前にGoogle Mapsで大体の経路と方向を見ておいて、現地ではその記憶と勘だけで道を選ぶのが楽しい。「合ってた!」「外れた!」のいずれにしても、脳にビビッと刺激が来る。山歩きも多分にこれと似たところがある気がする。
一本道を進んでいると波の橋立という看板を見つけた。これはなんだろう。
波の橋立
青海島には何度も来ているのだが、いつも通方面に進んでしまうので、西に来たのは初めてだ。どうやら観光名所っぽいので少し寄り道をすることにした。
先の大きな立て看板を左に入っていくとホテルの奥に駐車場があり、波の橋立の説明があった。
波の橋立と青海湖
波の橋立の看板から
波の橋立は、日本海の潮流の作用により礫と砂が直線状に堆積したもので、長さは1,300mもありクロマツの林は、防風や防湖の役目も果たしています。青海湖は、淡水湖で農業用水に利用されていますが、冬季には多くのカモ類の渡来地でもあり鯉や鮒も多く太公望にも人気を呼んでいます。
なるほど、天橋立(あまのはしだて)にあやかったものか。光市の室積半島も周防橋立とか名うっちゃってた気がするけど、みんな橋立が好きなんだねえ(笑)
波の橋立を少しだけ歩いてみることにした。砂州の幅は20mくらいだろうか。左が長門方向の日本海で、右が淡水湖の青海湖。その真ん中に砂州があり、整備された道が通っている。これを上から見たなら感動があるかもしれないけど、歩いてみてもそれほど変化のある道ではない。
うん。満足。そろそろ行こう。
青海島 高山オートキャンプ場
元の一本道に戻って何度も出てくる青海島 高山オートキャンプ場の看板に従って進んでいく。田んぼの間を走る広い道は、やがて山へと続き、ラスト1.5kmは離合の厳しい道幅となる。まあ、対向車には一台も遭わなかったけど。
山頂が近づいてきたと思わせる道の雰囲気から不意に正面が開けると、そこが高山オートキャンプ場だ。道は右に続いており、その先を高山林道と呼ぶらしい。
また左の山手にも登って行けるが舗装はすぐに終わる。左手前が高山オートキャンプ場入口だ。
高山オートキャンプ場へは微妙な位置に立入禁止の看板があったが、入口付近に立てられた高山登山MAPの看板では高山オートキャンプ場の駐車場にPマークがついている。これどっちだろう。停めて良いのかな。
判断がつかないので管理棟に聞きに行ってみるが、中の電気が消えており、呼び鈴を鳴らしても反応がなかった。20分くらい待ってみたものの、誰も来ないので駐車場の隅っこに車を置かせてもらって山に入ることにした。*1
*1 下山後にオートキャンプ場の管理者の方とお話しができたので、この駐車場問題については後述する。結論だけ先に書いておくと、高山に登るときにはオートキャンプ場の駐車場は使わずに、高山林道へ進んで2つ目の待避所に車を停めるのが良いと思う。待避所に車を停めて良いかどうかについては自己責任でとしておく。
高山
高山を登る際に選べる道を矢印で追加してみた。
- 赤矢印 看板の正面から上がっていく舗装路。歩きやすいに違いないと思わせるがすぐに野道に変わる。轍があるがあまり踏まれてないために雑草が肘をなでる。
- 紫矢印 実は看板の奥に登山道があるのだが初見殺しでまず気が付く人はいないだろう。下山後に少しだけ入ってみたが、全く踏まれていないようなのでお奨めしない。
- 青矢印 今回、下山に使った道。ハイキングコースとして大変よく整備されていて歩きやすい。登山感もあり、日本海に向けて開けた景色もある。超お薦めコース。
高山 登山
では、何も知らずに赤矢印コースで登山開始。
赤矢印の舗装路を歩き始めるとすぐに頂上まで1.4kmの道標がある。1.4km程度ならサクサク行こう。
舗装路を登り右にカーブを切るとすぐに野道に変わる。このあたりでデジカメのバッテリーが切れてしまった。iPhoneで写真を撮ることにするが、こちらもバッテリーが持つかどうか。何やら不穏な感じ。
不穏な感じはあるが興味のあるものは撮影してしまう。この崖、断面にキラキラはあるけれど花崗岩みたいに粒の大きくない岩でできている。これが山頂の看板にあった石英斑岩ということだろうか。
話は山頂まで飛ぶが、高山の山頂間際には上の写真のように妙に表面の滑らかな大岩もあった。こりゃまた一体なんだ。長門から下関の北部にかけては約9千万年前のカルデラが隆起してできた地形らしく、瀬戸内とはまったく違う岩質が楽しめる。
崖の先はちょい藪。轍の跡が見えるので昔は車が通っていたのだろうが、今は踏まれておらず雑草が肘を撫でてくる。高山を舐めて半袖で来たのは失敗だった。間違ってヘビの尻尾なんかを踏まないように慎重に歩いた。
唯一、赤矢印コースを選ぶ理由があるとすれば、この道の途中から波の橋立が見えること。もっとも波の橋立は山頂からも見えるので、積極的に選択する理由にはならないかもしれない。
物見台から山腹を回って、木止めの階段を上ると、これまでと雰囲気が一変して赤土が剥き出しの道になる。ここには下草も生えていない。ああ、これぞハイキングコースだ。
写真の分岐は右に行っても左に行ってもすぐに合流するのでどちらを選んでも構わない。これは下り時に確認済み。
山肌を右から巻いて登っていくと、林が途切れ、山頂が近いことを思わせる。そしてここを登りきると青海島の裏側が見えた。
手前の崖下には波で洗われた洞門、霞の向こうには海上アルプス、はるか先に見えるのは通地区だろう。美しい。足を止めてしばし景色を楽しむ。
ここから左に回り込んで行けば高山山頂だ。
高山 山頂
高山山頂には第2次世界大戦時の防空監視哨がある。高山を登った人のブログやインスタで必ず目にする景色だ。
第2次世界大戦(1939-1945)の頃、軍の命令により地元の学生達がブロックなどの資材を運び積み上げて作られた。敵戦闘機が飛来してきた時に、ここから光を照らして動きを追っていた。学生たちはいくつかの班に分かれており、見張りは1日交代の当番で行われ、弁当を持っていき寝泊まりしながら夜通し見張りを行っていた。
防空監視哨の看板から
この防空監視哨、コンクリート造りで2階建てらしいのだけど、草がひどくて1階に入ることはおろか近づくのも躊躇するような有様。ここは写真だけで良しとする。
青海島北西部に位置する島内最高の山で、基部は石英斑岩、200m以上は玄武岩および礫層よりなりたっている。緑の山脈と屁化に富む美しい海岸線が連なる紺碧の日本海の眺望はすばらしく、青海湖に影をうつす波の橋立の青松もひときわ美しく眼下に望まれる。
青海島高山頂上展望台の看板から
うん、確かに日本海の荒波に削られた崖と緑の海岸線には目を奪われたよ。
青海島の高山山頂からの景色
高山山頂の防空監視哨から始まり青海島の日本海側の崖、海上アルプスを見て、向こうに通、カメラが動くと仙崎が現れ、次に長門の街、黄波戸から千畳敷方向へと右回りに画面が移っていきます。なかなか見ることのない海からの長門市をお楽しみください。
さて、お楽しみの三角点。防空監視哨の正面にある高山の三角点は二等。ただ二等の文字が左から書いてあることや角・点の字が新漢字であること、石も新しいことから最近作り直したものかも。文字の一部が草で覆われていたので草抜きをしておいたけど、北長門国定公園で草を抜いて良かったのかな。
もう一つ三角点の情報を。この三角点の基準点名は高山ではなく大日比。山口県長門市仙崎大日比というのは青海島の真ん中あたりの地名なので、なんで?って感じ。
高山 下山
高山から青見島の自然を存分に堪能したので下山に入る。高山登山MAPでいくつかルートがあることは確認済みなので、登りと違う道を行きたい。
山頂付近に木止めの階段があり(写真では右)登りはここを通ったが、階段を降りなくても直進出来そうな道があった。登りでは気が付かなかった細い道だがこれを行ってみることにする。実はこれ大正解。
細いが確かに踏み跡のある道をたどっていくと急坂を降りることになった。道は確かにあるので手袋をはめて支えになる木を持ち降りていくと、登りの赤矢印コースの側道につながった。
側道をそのまま進むと広いハイキングコースに出てきた。どうやらこれは赤矢印コースからの枝道のようだ。ここで高山登山MAPを思い浮かべる。確か山頂から見て左に進める道があったはず。これを行こう。
これがとにかく広くてよい道で、下りということもあって歩が進む。先の高台の向こうに空が見える。あそこには何があるんだろう。
辿り着いたその高台は海に向かって切り開かれ、滅多に見ることのない青海島の裏側、日本海側の崖を間近に捉えることが出来た。しばらく景色に見入っていると、仙崎から出た遊覧船が崖下の岩を回り込んでいくのが見えた。明るく一人でも全く寂しいとも思わない場所だ。いつまでもこの景色を見ていたいがそうもいかない。
先へ進もう。
大展望の高台からさほど歩かないところで東屋を発見。ここにきて今日は一度も休んでいないことに気が付いた。東屋のベンチに腰を下ろしお茶を一杯、煙草を一服する。
備え付けの地図看板があったので、一応、高山オートキャンプ場への帰路を確認しておく。高山(右下)から来たのだから、東屋の奥を下っていけば良い。その下り口も明らかだ。
東屋から先の道も素晴らしい。山を下ってる感のある場所には木止めの階段、写真のような午後の木漏れ陽が差し込むよくよく整備された林道もある。海の絶景も良いがこうした山の景色も心が和む。景色の変化に富んだいい道だ。
林を縫って降りてくると舗装路に突き当たった。出てきたのは高山登山道MAPの青矢印のところだ。林道まで出てみるとガードレールが青色に塗られていた。こんな色のガードレールはこれまで見たことがないので、登山道の入口として目印になるだろう。
より詳しく言うと、高山オートキャンプ場から高山林道に入るとすぐに青いガードレールが目に付く。これを見つけた後、右手崖側に待避所が2ヶ所続く。どちらの待避所も車が3台は置けそうだし、駐車したとしても交通の邪魔にもならないくらいに広い場所だ。それに、そもそも行き違う車もない。車を停めるならここかなあ。
この2つ目の待避所の山側に青矢印の登山道、つまりは僕が今回下りてきた道がある。おそらくこれ以上にうまい説明はないので自分で行ってみてその目で確かめてもらいたい。赤を進むくらいなら青。上に書いたように青矢印の道は足元も景色も良い。
青ガードレールを見つけて舗装路を右に降りていけば、ほどなく高山オートキャンプ場に到着。前半はカメラのバッテリーが上がったり雑草に肘を舐められたりと散々だったが、後半は景色よし足元よしで、終わり良ければすべて良しだ。
今日歩いたルートは登山MAPにより明らかだ。なのでいつも載せるコース図は青海島全体が写るように地図を広げておいた。この方が高山の位置や風景写真との関連が分かりやすいだろう。山行自体は全行程2.4km程度で楽な山だったと付け加えておく。
高山登山時の駐車場問題
さて、高山オートキャンプ場まで戻ると管理棟に灯が入っていた。窓から管理人のおじちゃんが見えたので、車に戻る前に管理棟に行って、帽子を取って挨拶をした。もちろん、立入禁止の看板が気になっていたからだ。
立石「こんちわ。すんません、高山登ってきたんで駐車場お借りしました」
管理「ああ」
窓を開けておじちゃんが対応してくれたが、あまりいい反応ではない。やっぱ駐車場は立入禁止か。謝るしかないな。
立石「まずかったっすか、すみません」
管理「立入禁止の看板あるじゃろ、駐車もダメなんよ」
立石「登山MAPの駐車場がこっちだったもんで。ホントすみません。」
管理「あれは別の団体が立てたけぇなぁ」
以下、おじちゃんの話を要約。
昔は農村整備にお金がついてたからね、このキャンプ場も国か県のお金で整備されたの。管理棟は1997年の施工でもう25年も前の話かな。ところが市町にはお金がないからさ、維持管理は私ら地元の人間でって託されたわけ。日に何時間か詰めるとバイト代にもなるしね。
ところがキャンプ場を使わないのに車を乗り入れた人が人身事故を起こしてねえ。私らも委託は受けてるけど事故の責任まで負えないから。訴えられると怖いから。これは立入禁止にするしかないなあって。
「なるほどなるほど」と合いの手を入れながらお話を伺っていたのですが聞けば聞くほどおじちゃんの仰る通り。納得です。
「おっちゃん分かったわー。これネットで広めとくわー。」とお約束したので書いているのがこの章なのですが、地元のおじちゃん、おばちゃんたちにご迷惑をおかけしないためにも、日帰りの高山登山時は高山林道の避難帯を使ったほうが良さそうです。*2
*2 もちろん管理人さんがいらっしゃれば、キャンプ場の一時利用で1,000円払ってでも駐車場に停めたほうが安心感があります。総合案内の看板を載せておきました。高山に行かれる方は参考になさってください。
こうやっておっちゃんとじっくり話しこんで、帰り際には「あんまり数ないんだけどさ」と青海島のパンフレットまでいただいちゃいました。
青海島、楽しかった。日本海側の景色も良さそうだし、今度は遊覧船に乗りに行ってみるかな。