11月28日、この日の予報は曇り、最高気温13度、最低気温8度の予想。
例年より温かいとは言え、11月も終わりとなれば山口県でもさすがに寒くなってきた。
歩きたいのは歩きたいのだが、出来るだけ楽をして、なおかつ眺望の良い山はないものかと検索をすると長門市の花尾山が見つかった。
これだな。行ってみよう。
花尾山への入り方
花尾山へは美祢市の如意ヶ岳側からも入れるようだが、最も整備されているという長門市の渋木方面からのコースを取ることにした。
市の尾構造改善センターまで
美祢から別府弁天池に向かい、これを越えて、於福から湯本温泉に向けて車を走らせる。
途中、弁天池辺りで如意ヶ岳(頂上付近に赤白の鉄塔が立っているので目印になる)を右に見て、左を舐めていきあれが花尾山だなとアタリをつけた。
花尾山の特徴は長門富士とも呼ばれる三角形、あと頭の部分がハゲ。うむ、写真の真ん中の山に違いないだろう。
花尾山への行き方を簡単に。
於福から湯本温泉に向けて走りトンネルを2つ越える。しばらく行くと268号線に曲がる大きな看板があるのでこれを右。
よく見ると花尾山登山道入口の看板も下に付いていた。
268号をしばらく進むとカーブの手前に花尾山登山道の看板がある。矢印通りにこれを右。
ここからは一本道。
青い橋を渡るとT字路になっているが、これを右に曲がれば10m先に市の尾構造改善センターがある。
市の尾構造改善センター
市の尾構造改善センターさんが、花尾山の登山者に対してあまりにもウェルカムだったので、章立てしてご紹介したい。
まずは駐車場の話。
市の尾構造改善センターらしき場所について、ここかなあ、ここに停めて良いのかなあと周りを見回すと、花尾山登山者駐車場の看板を見つけた。
市の尾構造改善センター前の駐車場に車を停めて良いのだ。
こういう看板があると安心して車を停められるので大変ありがたい。
これが市の尾構造改善センター。多分、地域の公民館を共用されているんだと思う。
先の駐車場の件もそうだが、市の尾構造改善センターが花尾山の登山者に対してどれだけウェルカムなのかと言えば、それは玄関の張り紙に表れている。
登山地図が玄関内の下駄箱の上にあります。ご自由にどうぞ。
市の尾構造改善センター玄関の張り紙
トイレご利用の方、玄関からどうぞ。
いや、なかなかここまで登山者にウェルカムな地域もないよ。
後から出てくるが、子供を引率する花尾山の案内人がいたり、新しいリボンを巻いてくれている人がいたり、地域をあげて花尾山を盛りたてているのを感じた。
素晴らしいことだと思う。
お言葉に甘えて玄関に入り、下駄箱の上の花尾山登山案内図を1ついただくことにした。
この地図、とてもわかりやすい。
よし、左の鈩コースを登り、右の本谷コースを降りることにしよう。
まずは現在地から地図板のあるところまで行くことにしよう。
花尾山登山 鈩コース
取りつき
畑の横を通る農道を上がっていくと、なぜかSoftbank Hawksのユニフォームを着た案山子がお出迎え。
奥の案内板にも案山子が描かれており、鈩コースと本谷コースを間違えないために一役買っている。
案山子から先は林道といった風情。
林道を進んでいると、軽トラが3台連なって停まっており、数人の方が談笑されていた。
「こんにちはー」と声掛けし、軽トラを避けて進もうとするが・・・
猟友会の爺ちゃんらと談笑
ふと沢の下を見ると、そこにも人がいらした。
おおう、鹿を解体中だ。
「こんちわー。美東からこっちは鹿多いっすもんねー」
と談笑中の爺ちゃん方に割って入る。
「おう、こんちわ」の声に
「くくりですか」と聞くと
「これ」と鉄砲の格好。
オレンジの帽子に〇〇猟友会と名前が入っていた。
「それじゃ、だいぶ早くから入っちゃったんでしょう?」
と聞くと9時くらいかなと。この時11時くらいだったので、ごく短時間で仕留めて下ろしてらっしゃることが分かる。
その後、お前どっから来たんかとか、今日は山に人多いぞとか、中学校の校歌に花尾山入ってるぞとか、お前わしらの先輩に似とるなあとか。
(いや爺ちゃん、贔屓目に見ても70越えとるやろw なんで俺が先輩だよw)
など、なんやかんやで10分くらい話し込む。
爺ちゃんら強面なのに話し好きでめっちゃ楽しかった。
お礼を言ってハイキングに戻ることにする。
※ ちなみにこの捕殺は駆除ではなくお客さんへの提供(食用)とのことだったので、あらためて書き加えておく。命あるものを美味しくいただく。誰もが行っていることで何も問題はない。もともと人間は罪深い存在なのだ。
登山を再開
その先もずっと沢沿いに林道が続く。
林道の終点は車が3台は置けそうな広場になっており、その手前の木の橋を渡って山道に入っていく。
ここから頂上までは1.6kmの道標が立っていた。
橋の先は緩やかな登り。
間引きされた木が転がったままなのは気になるが、そのおかげで明るい山道が続く。
傾斜はゆるく正にハイキング気分で歩を進めることができる。
ちょっと桂木山にも似た感じで、美祢や長門の山は比較的整備されている印象がある。
頂上まで1.4kmの看板を過ぎ、再び木の橋を渡ると、道の様相が変わりガレ始めた。
この時点ではガレた沢を渡って、小石交じりの山道を登って行くんだなあと感じていたのだが…
枯れた沢を進むようになった。
枯れたというか今は水がないだけで、谷あいになっているので雨が降ればここに流れができるのだろう。岩が苔むしているので比較的緩やかな流れが想像できる。
花尾山の鈩コースで一か所だけ迷ったところがここ。
枯れた沢を右に上がってきたところで、足元に注意しつつ歩いていたら曲がり角を見逃してしまった。
写真だとうまく伝わらないかもしれないが、ここは直進できるように見えるのだ。
で、少し進んで、あれもしかしたら違うかなと感じ、引き返してみると右に行ける道があった。
足元ばかり見てると鋭角な曲がり角を見逃す。
山歩きあるあるだ。
曲がってきた道は巻き道で足元も良かった。
道標を見るまでは、もしかしたら直進が正解で、今、迷ってるのかなとの疑念も持ってたので安心する。
先ほどの迷い道は、そのくらい直進でも良かったのかもと迷わせるところだった。まあ、2回目からは迷わないと思うが。
巻き道の下は水のある渓になっていて、対岸の大石には注連縄がかかっていた。
なんだろう。岩の下が自然の祠の様にも見えるのでお祀りしてるのかな。
まあ、近寄らない方が良さそうだ。
近寄らない方が良さそうだと思ったら、道が回り込んで、先ほどの大岩の上の方のガレを登っていくことになった。
このあたりは開けていてボケーと登って本道を外していたが、キャキャキャとの声が聞こえてきて我に返る。
上方を見ると10数名の親子連れがいらした。
猟友会の爺ちゃんたち以降ここまで誰にも会わなかったのだが、急に山が賑やかになった。
尾根への取りつき手前だったのだが、団体さんは総勢30名強で、下りは大渋滞。後から聞いた話では、この団体さん、長門の地域コミュニティーのイベントかなにかの一団だったようだ。
写真は第2陣を見送ったところだが、小学校低学年くらいの子ども達もいて危なかったので、脇によけて3陣、4陣ととにかく全員に先に降りてもらった。
大人も滑ってこけてる人も何人かいた。大人のほうが慌てちゃうのかもしれない。
沢を脱出し、団体さんを見送って、狭い小道を駆け上がると、途端に空が開けた。尾根が近いのだろう。
このあたりから木々に真新しいリボンが付けられていた。
狭い小道の途中でリボンを付けられている方がいらしたので少しだけお話しをさせていただいた。
「これだけ分かりやすいコースならリボンも要らないでしょう」などと失礼なことも言ったが、実際、下りの本谷コースはリボンがないとやばかった。
開けすぎていてどこでも歩けそうな気がするんだよね。
リボンがないと迷うわ。
花尾山の尾根
先ほどの木立を抜けると尾根に出てきた。
考えてみれば花尾山はここまでまったく景色がなかったのだが、不思議と飽きさせなかった。
それは鹿の解体や爺ちゃんらとの会話に心躍らせたり、林道から明るい山道、沢、ガレと変化に富んだ道を歩いてきたせいかもしれない。
この尾根からは、朝、山の全景を取った別府弁天池あたりが見えた。
ということはつまり、ここから山頂まではハゲの部分を上がっていかなければならないということだ。
ラスト200mはかなり傾斜が急で、砂が剥き出し。
このハゲ、けっこう滑る。
ズルズル滑りながら上がってきた。
頂上付近は芝が生えている。
これも滑る。
花尾山山頂
なんという開けた山頂だろう。
この開けた花尾山山頂には2つの石積みの祠がある。
一つは華尾山吉野山権現、もうひとつは花尾山権現らしいのだが看板が朽ちていてどちらがどっちとは残念ながら分からなかった。
片方は秋吉台を見守っており、もう一つは日本海を見守っていらっしゃった。
花尾山山頂は360度開けた眺望があり、あちこちの山を指す道標がある。
色々見るところが多いので後回しになったが、花尾山の三角点を接写。
幾分欠けてはいるが、たぶん一等三角点だろう。
ところで、あまりに開けた眺望なので360度ビューを撮ってみた。
ちょっと風の音がうるさいが、山頂の雰囲気はお分かりいただけると思う。
あまりに風が強いのでビデオを撮った後に一枚着込み、熱いコーヒーを飲みながら、のんびりと景色を眺めていたら山陽小野田の方向に海を見つけた。
この眺望なら大分の国東半島が見えるだろうことは想像できるが、まさか小野田の港あたりまで見えるとは思わなかった。
日本海から瀬戸内まで。なんて素晴らしい360度ビューなんだろう。
ここで最近手に入れたARアプリを使って山を同定していたら、スマホがバッテリー切れを起こしてしまった。
まずいなあ電話もつながらないぞ。これは慎重に降りなければ。
花尾山下山 本谷コース
コーヒーを飲み終わり、さて下山は本谷コースをと道を探していたら、上ってきた方向と反対の下りに「本谷コース」の看板を見つけた。
登りのラスト200mも急だったが、下りも転がり落ちそうな坂だ。
転がらないように行こう。
芝の生えたとんがりお山を下っていくと、鞍部には広葉樹の落ち葉が広がっていた。
ここを降りている途中に、キョン!と甲高い鳴き声が響いてくる。なんだか近いなあ。
まずいとは思ったが、鹿程度であればコースを変える必要もないだろうと高をくくりそのまま進むことにする。
しかし、降りるに連れ、鹿の鳴き声の間隔が狭まってきた。やつらもストレスをためているのか。
写真左の森の横を抜けているとき、とうとう耳のすぐそばで鳴き声を聞いた。
えっ!と驚き、間違いようもない方向を見ると、10mもない先の木の下に2頭の鹿がいる。
2頭とも首を上げこちらを見ている。足がジンとする。
目が合ってしまったので、こちらもじっと相手を見据え、後ずさりしながら進んだ。
鹿とは言えやっぱり野生は怖い。
何事もなく通り抜けられたのは幸いだった。
先ほどの鞍部からは、少し丘を登り稜線歩きのような状態になる。
落ち葉がふかふかな林の中を歩く感じで、これは鈩コースにはなかった風景。
気持ちが良い。
その先が、座禅岩と本谷コースの分岐になっていた。
そのまま本谷コースに下っても良いのだが、見るとすぐそこに座禅岩があったので写真だけ撮っておいた。
なかなかゆっくり休めるところがなかったので、ついでにコーヒーで一服する。
生を実感。
ここから沢下り。
上りの鈩コースもガレていたが、下りの本谷コースも沢沿いや沢そのものを下るのでガレガレだ。
しかも沢の周りが開けていてどこでも歩けそうに見えるので、下手すると全然関係のない道を行ってしまいそうになる。
ここは結んだばかりのピンクのリボンが大変ありがたかった。
最初に手に入れた地図にあったなめら滝は、思ったよりも大きな滝でしばらく見入った。
僕に写真の腕はないので、是非、実物を見に行っていただきたいと思う。
なめら滝からは沢を外れ巻き道に入っていく。
道は明るく、もう終わりかな、里に着くのかなと思わせるが、まだまだ。
ロープが張ってあるような急傾斜を降りると再び沢に入ることになった。
たぶん、なめら滝下の急傾斜を巻き道で避け、降りてきたのだろう。
最後の沢は横の岩沿いに道があり、なかなか雰囲気が良かった。
先ほどの沢を終えて緩やかな山道を降りると、段々畑に出てきた。
スマホのバッテリーも切れて心もとないところだったが、なんとか無事に降りてくることが出来て安堵した。
下りはテンポよく降りたために本谷コースの写真はあまり撮らなかったが、もし登りならば本谷コースの方がハードだったと思う。
鈩コースで登って、本谷コースで降りるのは正解だった。
帰り道から
帰りに別府弁天池近くからもう一度、花尾山を見てみた。
とんがり三角と頭のハゲが花尾山の特徴。あれに間違いない。あのハゲを雪に見立てて長門富士と呼ぶのだろう。
花尾山は山口県百名山の名にふさわしい山だった。
道の変化も山頂からの眺望も鹿のドキドキも良かった。
そしてなにより地域をあげてのウェルカムぶりがとても気持ち良い。
季節を変えてまた行こうと思える山だった。
花尾山別府コースの記事はこちら
2023年に花尾山の名前の由来を知って別府コースから登ってみました。
花尾山山頂には「幻の鳥居復活プロジェクト」で復活した鳥居が立っていました。別府コースはこの作業の資材を運び入れるために車が通れるよう再整備された道だと思いますが、登山口までの道のりが普通車だと厳しいので、ハイキングを楽しむのであれば今回ご紹介した市の尾構造改善センターさんに車を止めさせていただいて鈩コースや本谷コースから登るのが良いと思います。
長門市でお薦めのジビエ
さてさて、鹿の話がたくさん出たので、長門市でお薦めのジビエとして、ホテル楊貴館こだわりジビエカレーをご紹介しておきます。たしかバイヤーさんに取り上げられて、高島屋で売ってた時期があったんじゃなかったかなあ。
3パック2,000円くらい。評判良いみたいですよ。