若山登山口
戦国時代に大内義隆を葬り去り、大内義長を傀儡として政権を握った陶晴賢(すえはるかた)の居城がある若山へ行ってきました。
若山への入口は旧新南陽市あたりの国道2号線沿い。駐車スペースは登山口すぐ横か、舗装路を少し上った2つ目のカーブの辺りに、それぞれ2台程度置けます。
福川駅からこの若山城登山口~城跡~大きく山側を回って新南陽駅へと向かうルートは「陶の道」と名付けられ、美しい日本の歩きたくなるみち500選に選ばれています。
若山城登城のみちの副題の通り、家臣がこの道を通って城に登ったとされています。
うーむ、所変われば品変わると言いますが、大内側から見れば仇敵の陶晴賢を地元では大絶賛。
ずっと大内サイドから山と歴史を見てきた僕としては若干の違和感を感じたりもします。
若山城の歴史が分かる看板がありましたので書き写しておきましょう。
若山城悠久の歴史
若山登山口の看板
陶氏と若山城
陶氏は1350年~1557年までこの地方を治め、若山城築城は1470年。九代目城主・陶晴賢が1555年10月1日、毛利元就との厳島合戦に敗れ事実上滅亡する。
若山城での主な戦い
1551年08月 陶晴賢が主君・大内義隆、打倒に蜂起
1555年10月 杉重輔兄弟らが襲撃
1557年02月 毛利元就の防長侵攻
ちなみに、このブログの大内氏の最期に関する記事はこちらです。
さて、こうした歴史も頭に入れつつ、陶の道をまいりましょう。
若山登山
若山の表からの登りはこの通り舗装路で、僕も以前、車で登ったことがあります。
歩いて登るには非常にイージーで、残念ながら見るべき景色もあまりありません。
その代わりと言ってはなんですが、道のそこここに陶晴賢を讃える歌や人生訓、歌謡曲の一節などが書かれた札が下がっており、それを読んでいる分には飽きさせません。
若山を登ったのは10月31日です。そもそもモミジが少ない山ですが道路沿いに一本だけ紅葉を見つけました。秋の高い空に映えて美しいですね。
所要時間20分というところでしょうか、舗装路を歩いて登ってきてあっという間に広場に到着しました。
ここは二の丸・三の丸があったところです。この広場にはトイレもあります。
正面に見えるのはたぶん黒髪島。眼下に見えるのは夜市川(やじがわ)ですね。夜市川河口の山の向こうには海水浴場があります。後で行ってみましょう。
2022/08/30追記 黒髪島
岩石の本を読んでいたら、黒髪島で採石された徳山石(黒雲母花崗岩)が国会議事堂の外壁下層部に使われていたことが書かれていました。そういえば大津島から切り出された岩も大阪城の築城に使われていたらしく、昔からこの近辺の花崗岩は有名なんですね。さすが領家変成帯。
よくよく整備された道を進みます。今年の梅雨時期に来た時には落ち葉で道が湿っていたのですが、ずいぶん綺麗にされています。
この鳥居の向こうを登り切れば本丸に到着です。一礼して鳥居をくぐります。
若山山頂
若山は本丸跡が山頂となります。
最初に三角点を見つけました。右端が欠けていますが左に四の文字。四等三角点は逆に珍しいですね。
山頂でピクニックを楽しまれていたご夫婦としばし談笑し、登ってきた方向と逆の普春寺方面に降りることにしました。
嶺若山 普春寺さんにも車で行ったことがあるのですが、もともと若山にあった社を下ろして祀られているんです。
若山を釈迦如来に見立てた御詠歌「嶺高くわけ入る心は若山の普賢・文殊もあらたなるらん」がまた良いんです。
行きましょう。
若山下山
蔵屋敷跡からは獣道。斜めに傾いた足場に枯葉が積もり、これを九十九折りに降りていくようになります。
足を滑らせれば谷底なので山側に体を傾けて慎重に降りていく必要があります。
…で、今日の山の写真はここまで。
獣のうなり声が!
谷側にロープの張られた枯葉の積もった道を軽快に降りていると、グルルルーと獣のうなり声のようなものが聞こえました。
ん!?と思って立ち止まり、あたりを見回したのですが何も見えません。
聞き間違えだったかなー
と、1、2歩進むとやはりグルルルルルルルーと低いうなり声が上がりました。
あーまずいと思って声の方向を見ながら後ずさりし、大きめな木に身を隠して、目だけでうなり声の方向を見やるのですがやはり獣らしきものはみつかりません。
うなり声は大型犬が威嚇するときに喉を鳴らすのに似ていました。
僕のイメージだと鹿はキョッ、猪はブギィー、熊はクォ-ン。
犬かあ。野犬は嫌だなあ。狂犬病が怖い。
いや待てよ。熊って本当にクォ-ンだっけ?
喉鳴らさないのか?
そんな事を考えながら2分くらい動かずに大木にしがみついていたのですが、何も見えないし何も起こらないので、こりゃ逃げたかなと。
よし。それじゃあこの下りを一気に下ろうと、意を決して走り始めたら
グルルルルルルルー!!
逃げてなかったのかよ!
これはいけません。どうやらこの先5mあたりがなんらかの獣のテリトリーになっているようです。かなり急な動きをしたので向こうも警戒心が強くなってるに違いありません。
こちらが逃げるしかない。
どこに何がいるのか分かりませんが、とにかく声の方向に目をやりながらジリジリと後ずさりをしました。
枯葉の積もった狭い登り道を後ろ向きで登るのですから神経を使います。万一こけたら、万一足を滑らせたら、ジ・エンド DEATH!
ずっと声の方向を見ていたのですが、何かが追いかけてくる感じはなく、20mかもう少し距離を取ったところで一目散に頂上に向かって駆け上がりました。
なんの獣か分かりませんが、人間の足では逃げ切れるはずもないので、きっと追いかけてはこなかったのでしょう。
結構な距離を駆け上がり頂上にたどり着くと、手のひらに汗、足に震えがきましたが、取り合えず怪我はなしです。
膝をガクガクさせながら登りと同じ舗装路で若山登山口まで降りてきました。
今回、なんとか無事だったのは、これまであらゆる山で出会った神仏に手を合わせてきたからに違いありません。
若山登山口のお地蔵様にも無事に降りてくることができたことを感謝し、手を合わせておきました。
下山後に一服して思うこと
胃がキューと上がって食欲も湧かないので、夜市川河口向こうの海水浴場へやってきました。
舗装路を歩いているときも、とにかく山から降りるまで気が気でなく、ここでやっと落ち着いてタバコを一服できました。
うーん、やっぱ単独は危ないなーと思ったんだけど
まあ、10人で行っても獣は危ないわなと。
なにはともあれ生を実感。
生きててよかった。
熊対策グッズ
熊対策グッズとか使わないで済むならこれに越したことはありませんが、万が一のための装備は必要だなあと痛感した次第。相手が熊だったか分かりませんけれども。
クマよけ鈴
こちらが気が付かないうちに相手が逃げてくれるのが一番良いですよね。効果のほどは分かりませんが山ですれ違う人はだいたい付けてらっしゃいます。当然、僕も付けています。
僕が付けてるクマよけ鈴はモンベルの上記タイプなのですが、音はカランコロンって感じです。最近調べたところによると、クマは高い音にしか反応しないそうで、これで大丈夫かなーと僕はちょっと心配になってきています。
そこで今から買うならお薦めは東京ベル製作所の森の鈴。この鈴、いくつも良いところがあるのですが、まず、ティーンティーンという高い音色が良いです。
そして非常に長く音色が続く。この点も良いですね。ポイントは鐘の外を巻いているプラスティックカバーで、これがあることでリュックに当たっても鐘の振動が止まらず、ずっと鳴り続けるわけです。
もう一つ良い点は消音機能。クマよけ鈴は山の中を歩くときには頼もしいのですが、目的地や街に着いてからチンチンなり続けるのはちょいと邪魔に感じるはず。そんな時には上のポッチを押し込めば消音されます。
色々機能的でよく考えられてます。最近、見つけてこれいいなあと思ったので皆さんにお薦めしておきます。2021/04/04追記
ホイッスル
いざ獣と対峙した時には無駄に刺激しないほうが良いような気がしますが、鬱蒼としたところに入る前に警告として吹くのには良いかもしれません。
どちらかと言うと緊急避難的な使い方ですかね。SOSの・・・---・・・もそうですが、3回吹くと救助要請の意味になります。
熊撃退スプレー
鈴とホイッスルはリュックに付けてるんですが、今回ばかりはスプレー持っとかないとやばいかもと思いました。マジで。
もし獣の姿が見えていたら冷静でいられたか分かりません。遭遇がないことを祈りつつ対策グッズをどう使うかイメージトレーニングだけはしておいた方がよいですね。
ホント、生きててよかった。
あのうなり声はなんだったんでしょう?
本文にも書きましたが一番近いのは大型犬のうなり声なのですが、犬であれば直後にワンワン鳴くような気がするんですよね。それに犬ってそんなにテリトリーを気にしないような気がします。
で、家に戻ってから山にいそうな野生動物の鳴き声をYoutubeで聞いてみたのですが、ハクビシンのうなり声が割と近かったかも。もう少しドスの効いた低音ではあったのですが。
ハクビシンなら目視で見つけられなかったことや追いかけてこなかったこともなんとなく分かるような気がします。
まあ、なんにしても野生動物に咬まれたり引っ掻かれたりしなくて良かった。