せっかくの土曜日なのに午前中は雨。午後からの降水確率は10%程度とのことで、濡れてても歩きやすい山はないかなと学生時代からよく行っていた笠山を歩いてみることにしました。
笠山は山口県百名山の中では最低峰の標高112m。山口県最高峰の寂地山(1,337m)を登った翌週に最低峰か(笑)と思っていたら、笠山は思いのほか見どころが多かったのです。
笠山豆知識
午前中に調べておいた笠山の豆知識を最初にお伝えしておきますね。
笠山の成り立ち
笠山の名の由来は「山容が市女笠に似ていることから、笠山と名付けられたという(萩市郷土博物館研究報告-第10号)」だそうです。ちなみに市女笠というのはこれです。 アフィではありませんので形を見比べて見てください。
昔の人の例えは素晴らしく、正にこの市女笠の形が笠山の成り立ちを示していました。ちょっと笠山のWikipediaを見てみましょう。
(笠山は)日本でも数少ない単成火山群である阿武火山群に属する火山である。岩石は玄武岩質安山岩。1万1400年前の噴火で溶岩流を発生させて溶岩台地ができ、8,800年前の噴火でその上にスコリア丘が形成された。
笠山のWikipedia
スコリア丘というのは「マグマが吹き上げられて飛散冷却してできる岩塊が火口の周りに積もって円錐台形の山を成したもの」だそうですから、笠山は以下の2段階で形成されたことになります。
- 11,400年前にだらだらの溶岩で基礎になる台地を形成した後
- 8,800年前の噴火で噴石が積もって円錐形の山を形成した
写真の通り笠山はこんもりした台地にお椀が乗ったような正に市女笠の形をしています。昔の人が感覚で名付けた「笠山」という名前は正鵠を射ていたというわけです。すごいですねえ。
笠山は日本一小さい火山ではない?
僕が幼かったころ(昭和40年代)、笠山は日本一小さな死火山と習ったように記憶していますが、現在では島根県松江市八束町大根島の大塚山が、標高42mで日本一標高の低い火山として名乗りを上げています。
あれあれ、日本一が取られちゃいましたね。どうしましょ。
んで、まあ昔はいろいろな定義が緩くてですね。火山について言えば煙を吹いて活動している火山は活火山、そうでない火山は休火山とか死火山と呼ばれていました。
ところが、気象庁のホームページにあるように
近年の火山学の発展に伴い過去1万年間の噴火履歴で活火山を定義するのが適当であるとの認識が国際的にも一般的になりつつあることから、2003(平成15)年に火山噴火予知連絡会は、概ね過去1万年以内に噴火した火山及び現在活発な噴気活動のある火山を活火山と定義し直しました。
気象庁 火山について
とのことで、8,800年前に噴火の形跡のある笠山は平成15年から活火山となっています。
大塚山の噴火は19万年前のようなので活火山ではありませんが、スコリア丘があるとのことなので噴火でできた山ではあるのでしょう。その意味では日本一低い火山は大塚山であると主張されても仕方がありません。
なので笠山は今後「日本一小さい活火山」であると主張することにしましょう。日本一の称号は大事です。皆で分け合えば良いんです。鶏のから揚げみたいに。
その他笠山に関する情報
その他、笠山を歩く前に仕入れた情報としては、椿の原生林が有名というのもありました。原生林と言いながらも他の植生を刈るなど結構手を入れているようだという情報も。まあ、そもそも椿の見頃は2月から3月なので、あまり見られないだろうなーとあまり期待しないことにします。
このくらい知っていれば笠山を楽しめるかな。よしレッツラゴー!
笠山ハイキング
萩へは262から旧有料経由で向かいました。旧有料からズドーンと東萩駅に抜ける道が出来たので笠山に向かうには迷いようがないのですが、菊ヶ浜はいまいち曲がり角が分かんなくなっちゃったなあ。
今日の笠山ハイキングルート
ややこしいので先に今日の笠山ハイキングルートをご説明しておきます。
出発点(S)は明神池です。風穴を探して見つけられず右に進路を取り自然探求路へ。
海沿いを歩いた半島の先が虎ケ埼で、ここには灯台があります。
虎ケ埼から山に入り、椿群生林を見て、笠山頂上(赤丸)を目指しました。登山道は岩と苔でなかなか綺麗でしたよ。
山頂からの下りは舗装路のため割愛しています。
さて、それでは明神池からまいりましょう。
明神池
笠山がある半島の根元の明神池に到着しました。明神池のすぐ手前に有料駐車場があるのでここに車を停めて笠山に登ることにします。
明神池は半島の根元にある天然の塩水湖です。笠山噴石の隙間から海水が流れ込んでるようです。
駐車場からすぐのところで池を覗き込んでボラ玉や大きなボラを見つけたのですが、それはまあ大した感動はありません。ボラは汽水域や川でも見ますからね。
でもメジナやフグを見つけると、こりゃすげーやと。海に繋がってるんだなあという実感がわきました。
明神池から自然探求路へ
厳島神社の右側を池に沿って歩いていくと風穴があるとのことですが、行き止まりであったり道が続いてなかったりで風穴を見つけることは出来ませんでした。
3つ目の道として「風穴の店」の看板があったのでその方向に向かうとなにやら階段が。
階段を登ってみると生活道路の上り路。少なくとも登り方向に行けば良いかと進むと、よく分からない公園に出てきました。
公園を左に曲がると元に戻る気がするので、右に進んでいくと笠山椿群生林の看板を発見しました。
朝、地図を見たときに半島の先に虎ケ埼という灯台があった気がします。椿の群生林も見てみたいし、この道でいっか。
笠山の溶岩流と噴石
自然探求路は笠山の半島の右側をぐるっと回っていく道でした。
向こうに見える島も阿武火山帯の昔の噴火でできた島らしいです。岬から見える六島ともそうだとの看板が虎ケ埼の分岐に出ていました。
午前中が雨でしたから山には入らないと決めていたのですが、さっき見ることのできなかった風穴があるのなら、濡れた道を20mくらいは進んでも良いかなーと行ってみることにしました。
風穴ってのは風が吹き上げてくるわけではなく、多孔質の岩石(要は噴石)中に浸透した水分が蒸発する際に気化熱を奪うそうで、その冷気は13度くらいとの看板がありました。
風穴群までの道があまり良くなく、足元の岩がゴクッと動いたりするんですよ。自然探求路に入ってから誰にも会ってないし、寒気がするので早々に撤収しました。
まあ、寒気は風穴のせいだと思いますけど。
美しい自然探求路に復帰し、しばらく歩くと海にお降りていける場所がありました。
これがめっちゃ楽しかったんです。
ネトーっと張り付いた感じの岩が海に向かって下っていました。これはおそらく1万1400年前の溶岩。
穴が空いてまだそれほど洗われていない大岩。こういうのが多分8,800年前の噴石ですね。
そこらに転がっている小さな石は削られ転がされて丸くなっていましたが、よくよく見ると小さい穴が無数に開いており、これらも噴石として飛んできたのだろうなあと思わせます。
自分が、1万年前の石を手に取って見てるとか超楽しい。朝調べといて良かった。
海岸で散々楽しんでから道に戻ると、溶岩流についての説明看板が設置されていました。
看板で1万年前の話を再確認できたことも勿論嬉しいのですが、その前に自分の目で手で遊んでいたので、シナプスがバキバキに繋がった感じがします。
虎ケ埼灯台
自然探求路から開けた場所に出ると分岐が出てきました。
笠山頂上は気になりますが、わずか200m先であれば虎ケ埼灯台を見ないという選択肢はありえません。
お食事処のあるさらに開けたところに出てきまして、そこを右に曲がれば虎ケ埼灯台。ちなみにここまで誰にも会っていませんでしたが、お食事処へは車で来ることが出来るようで結構な数の車が停まっていました。
話しを戻します。虎ケ埼灯台は初点昭和34年9月とのこと。ちっちゃい灯台で立入りも禁止されていませんのでぐるっと回ってみましたが、景色はこれまでの道と変わらず。
前述のとおり笠山の半島の一番端っこに当たる虎ケ埼は車でも来ることが出来るようでして、つばきの館という食堂がありました。
ここまで自然探求道を歩いた距離は2kmくらいでしょうか。笠山が112mってことで僕は舐めきっていまして、水も食べ物も持ってこなかったもんですから、これはラッキーとばかりにつばきの館の自販機で桃の天然水をゲットしました。
休憩所に併設の地図看板を眺めると、ここから椿の群生林を抜けて笠山山頂に向かう道があるようです。OK、乗っかりましょう。
笠山の椿群生林
手が入ってるから原生林じゃなくて群生林ってところがミソなのね。
つばきの館から僅かに上がると笠山椿群生林案内図や案内所があり、笠山椿群生林のパンフレットをもらうことも出来ます。
車で来られるのはこの公園があるからだな。なるほど。椿を堪能したのちにお食事して帰るって流れだ。納得。
椿の季節からは外れていますが、わずかに咲いている花もありました。また道の奥にはポロポロと花がかたまって落ちているところも。
落ちてる椿の花が形を保ったままで、しかも手に取ってみると瑞々しいんです。なるほど「椿の花は散るときに首から落ちる」というのが実感できました。
※ 椿を病人へのお見舞いに贈るのはタブーです。
枝と木漏れ日だけでもこれだけ美しいのですから、椿の見ごろの2月から3月であれば息を飲むような景色に違いありません。
笠山椿群生林内には高さ10mくらいの展望台がありましたので上ってみました。んが、常緑樹の椿に囲まれほぼ眺望はありません。わずかに一角から日本海が見えるのみです。これ最後に動画をつけています。
全然関係ないのですが、そういや花札には椿が入ってないんだなあとか思ったり。情緒のない僕です。
笠山登山
笠山椿群生林内で笠山頂上への看板を見つけましたのでやっと登山開始です。
しばらく岩と苔の美しい道をお楽しみください。
登山道は緩く、そして誰に会うこともなくシンとした道で、岩とコケに心洗われる感じがしました。たまに足元の岩がゴクっと動くので、昇り中は気は抜けませんが(笑)
いやそれにしても夏みかんが道端にぽろっと落ちているのには笑いました。さすが萩です。
ここは笠山山頂の駐車場に入るところですね。車道をまたいで反対側の坂を登れば笠山の山頂に到着です。
笠山山頂
笠山山頂には色々あるので、少し分けます。
笠山山頂園地
山を歩いてるとこうした石碑に出会うことが多いように感じます。もしかして、山口国体とか天皇陛下とかキーワードにしたほうが良いのかな。
そのむかしアダムスの来て貝とりし見島をのぞむ沖べかるかに
波たたぬ日本海にうかびたる数の島影に見れどあかぬかも
秋ふかき海をへだててゆりあかひのすめる見島をはるか見さくる
笠山展望台
天皇陛下も御覧になった六島(大島、櫃島、肥島、羽島、尾島、相島)については、最後に動画を載せておきます。
ところで萩六島ですが、御製ですごいフューチャーされてる見島は入ってないんだなあと。見島は有名なので当然入ってるものだとばかり思っていました。
笠山火口
いよいよ火口に降りていきます。
階段の右手に火山岩と思われる壁がありましたが、ここいら一体、火口内は赤いんです。
なんでだろう? たまたま鉄分の多い溶岩が出たのかな? いや1万年経てばさすがに酸化するだろうし、なんでだろうね。
今から降りていくんだけど、今の今、噴火されると怖いね(笑) ちょっと川口探検隊の気分。
火口を覗き込んでみるけど何にも見えない。まあそりゃそうだ。なんか出てきてたら、この記事書けてないもんね。
なのでタイトルの活火山ってのはちょっと煽りすぎなのかなとも思っていたりもしますが、気象庁のお墨付きだしいいか。
笠山三角点
笠山の三角点は火口から出てきて、左上に階段を登っていくとあります。逆に展望台から回り込んでもOK。
笠山の三角点など誰もこれっぽっちも興味がないのでしょうねえ。土ぼこりをかぶってどこに文字が書いてあるのかすら分からない状況だったので、ぼろ雑巾で拭いておきました。ついでに軽く草むしり。
笠山は三等です。すっきりです。
笠山まとめ
笠山は山口県百名山の中では最低峰の標高112mですが、山の成り立ちや手の入り方が面白く見どころが多かった印象です。
事前に知識を入れていなければ面白いとは思わなかったでしょうし、明神池からただ舗装路を上がっていっただけでもやはりこうした印象を持つことはなかったでしょう。
ピークハントを主目的とせずに山を歩くのは楽しいのですが、そのためには事前情報の収集が大事だということがよく分かりました。
笠山、たいへん良いお山でした。ゴールデンウィークに散策などいかがでしょうか。お薦めしておきます。
笠山関連動画リンク
今回撮った動画をYoutubeで公開しています。ご興味がありましたら。
その他、萩の思い出とおまけ
笠山からの帰り道には色々と楽しい場所があったので、萩の思い出とおまけと題して付記しておきますね。
かつて狐島(きつねじま)にあった萩女子短期大学
萩にいた僕の先輩は、ずいぶん年下の可愛い娘と結婚したんですよ。ちょっとそれに関連した話。
萩女子短期大学はバブル景気只中の1989年秋、萩湾に浮かぶ半島・狐島中(きつねじま)に豪奢な建築の学舎を建て並べたことで話題となった。なお、本土との通路部には守衛所があった。
萩女子短期大学Winkipedia
「この守衛所があるがゆえに近隣の男性との接触が皆無!」と当時の萩女子短期大学の子がTVに投稿して、1990年「天才・たけしの元気が出るテレビ!!」で大合コン大会が催されたのです。
僕は25歳で東京に居たころですね。「おお!山口県じゃーん!」とTVで見てました。男性も女性もキャンパス内を大移動してた絵面があったように記憶しています。よく大学も許したなあと。
1990年ってのはホイチョイのちょっと後で、ネアカ・ネクラなんて標語があった時代ですね。男性から告白して、フラれたら、あばよー!なんて明るく去っていく。それをTVでみんなで笑う。そんな頃のお話しです。
世界遺産 恵美須ヶ鼻造船所跡
狐島からちょいと戻ると世界遺産が2つばっかしあります。
幕末に長州藩が西洋式帆船を建造した造船所が、恵美須ヶ鼻造船所跡として残っていまして世界遺産に登録されています。
恵美須ヶ鼻造船所では、物資輸送の丙辰丸と軍事練習艦の庚申丸が建造されたそうで、庚申丸は下関戦争の発端であるアメリカ商船ペンブローク号を攻撃しています。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%99%E8%BE%B0%E4%B8%B8
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BA%9A%E7%94%B3%E4%B8%B8
幕府がオランダ製の蒸気船を仕入れてる時代ですが、まあ、自分で造ってやろうという気概が良いじゃないですか。
恵美須ヶ鼻造船所の跡は掘り返し中のままなので、写真には恵美須ヶ鼻波消しブロックを写しておきました。
これ、笠山から切り出した安山岩を重ねて突堤が造られているんです。やっぱ足元がグラつくとこあるけどねw
世界遺産 萩反射炉
191号線を恵美須ヶ鼻造船所跡に曲がる交差点のちょい先にセブンがあるんですが、そこが世界遺産萩反射炉の入口です。
ちなみにセブンの店名は萩反射炉店だったりします。マジで。
反射炉は西洋で開発された金属溶解炉。最近DASH島でも紹介されてましたね。
反射炉は江戸後期に佐賀藩が初めて完成させて以降、全国各地に導入されたようですが、現存する遺構としては静岡県の韮山と山口県の萩のもののみとのこと。
ただ、萩の反射炉は実用炉ではなく実験炉だという見方が強いようです。残念。
世界遺産(登録予定) どんどん1号店
3つめの世界遺産(登録予定)を紹介させてください。
昔の萩の商店街のメイン通りから一本入ったところにある唐樋店が1971年開業のどんどん1号店です。
東萩駅近くの土原店の方が落ち着いた雰囲気で創業っぽいイメージですが、土原店は2号店なんです。
1号店の裏にはどんどんの母体の株式会社スナダフーヅさんがあります。
この1号店、僕が見た限りでは山口市内の店舗のようにおにぎりの種類が書いてなかったので、「肉天と…おにぎりは何があんの?」と聞くと「ワカメとノリだけです」と。
へー店舗によって扱うおにぎりの種類が違うんですねえ。知りませんでした。本店スペシャルなのかしら?
おにぎりを食べ進めるとなんと中からコブが出てきましたよ!これも本店スペシャルなの? それとも僕スぺ? いや間違ってコブって言ったのかも。すみません。
いずれにしてもこりゃもう世界遺産に決定だなと。
僕はどんどんが大好きなんです。
現場からは以上です。