クマが怖いので県西部に行こう
ここのところ県東部でのクマ目撃情報が相次いでます。ざっと調べてみたところ一週間で18件とか。恐ろしいことに周南市の街なかにまで出没しているとのことで
まったくクマったもんです。
こんな時くらい山歩きをやめておけという意見もあると思いますが、この時期は気候が良くてなにより週末を迎えると足がむずむずするのです。
西部ならいいでしょ。
山口県は中国山地の端にあって県東部の山ほど高くて深いんです。山口県最高峰の寂地山は広島県との県境にあるぐらいで。一方で西に行くほど山は低くなりいきおいクマの出現率も下がります。関門海峡を渡ればクマもいませんしね。
じゃあ熊本県ってなんで?という疑問はさておき
秋吉台よりも西で見かけるのは鹿か猪です。猪は(ヌタ場や堀り跡をよく見かけますが)真昼間に本体に遭遇することは稀です。
一方、鹿は1度の山行で複数匹を見かけることがあります。でも鹿なんてケンケン鳴いて山肌を逃げていくだけですし、仮に襲ってきたとしても鹿だったら勝てそうじゃないですか。
よし。県西部に行くシカない。
大浦岳絶景コース
行き先を県西部に定め、YAMAPとヤマレコの地図をグリグリして目についた大浦岳に行くことにしました。実はごく最近「大浦岳」という言葉を、歴史だったか三角点の本で見た記憶があるんです。それがなんだったのかが思い出せなくて、現地に行けば何かわかるかなーと思いまして。
これについては結局わかんなかったんですけどね。
ここでコース概況をまとめておきます。
- 駐車場(S/G)は阿川ほうせんぐり海浜公園
- 阿川ほうせんぐり海浜公園はトイレあり
- 分岐までずっと舗装路
- 舗装路は令和5年6月まで車両通行止め
- 分岐から雲屏嶺は山道
- 雲屏嶺山頂は平たんでだだっ広い
- 雲屏嶺から大浦岳森林公園も山道
- 大浦岳森林公園はめっちゃ素敵
- 大浦岳森林公園もトイレあり
- 見晴らし広場からの景色が素晴らしい
往復7.4㎞で登りが291m。どれだけ景色に見とれるかによりますが2時間程度で行って帰ってこられる楽勝コースです。
それじゃ、駐車場の阿川ほうせんぐり海浜公園からスタートします。
阿川ほうせんぐり海浜公園
車は阿川ほうせんぐり海浜公園に停めました。こんなにきれいな海水浴場が角島近くにあるなんて僕は知りませんでしたよ。ちょっと阿川ほうせんぐり海浜公園も調査します。
この時期は海水浴客もありませんので入口の真ん前にドーンと駐車します。
車の真ん前にある柵はゲートなんかじゃなく、海水浴客のための休憩スペースでした。夏は日よけとかかかるんじゃないですかね。
阿川ほうせんぐり海浜公園にはトイレありです。この建屋、木の感じが良いじゃないですか。差し込む日差しも素敵でまさに立ちしょん気分。
ちなみに大の方も開放されてまして綺麗に使われていました。紙あり。水洗です。
阿川ほうせんぐり海浜公園とは不思議な名前ですよね。いわれを見つけました。
写真にある岩、もともとは阿川八幡宮の放生会で魚介を放った岩として放生礁(ほうしょうぐり)と呼ばれていたそうです。それがいつしか名前を変えてほうせんぐりと呼ばれるようになったと書かれています。
裏道を使って直接阿川に出てきた僕、そう言えば飲み物を持ってくるのを忘れてしまいました。
しまった。こんなところにコンビニなんてあるわけが、、、あ、そうだ。191号線沿いの角島から出てきたところにローソンがあったはずだぞ。ツールド下関でもお世話になったローソン。無事、飲み物・食べ物をゲットすることができました。
スタート
再び駐車場に戻ってきてスタートです。
事前の情報収集で大浦岳には公園だけでなく電波塔がたくさんあることをつかんでいました。
阿川ほうせんぐり海浜公園駐車場から電波塔のある山が見えます。たぶん、あれが大浦岳だなと方向を見定めて山行開始です。
大浦岳方向に向けてなんとなーく裏道に入り、祠のある橋を越え、山陰線を越えると三叉路があります。この三叉路も山はこっちでしょと右に。途中、農作業のじいちゃんに「大浦岳行きたいんですが」と一応確認すると「ああ、これこれ」と舗装路を示されました。
迷いようがないね。
人家がなくなり舗装路も狭くなってきたところに「この先通行止」の看板。
舗装路が長くてつまらないし山頂に公園があるなら車でくればよかったかなーなんて思ってたのですが、やっぱ阿川ほうせんぐり海浜公園に停めて正解だったようです。
とはいえ、実は結構奥までは車で入れるんです。この全面通行止の看板があるところは車幅も広くなってますし、十分Uターンも可能なので車を停めておけそうです。土日は工事してないようですし運転が上手で歩くのが億劫な方はここに駐車もありです。
工事についていうと、ここから先は本当に車で入らないほうが良いです。
先の道がこんな感じに落ちてのり面も崩れてました。改修の工事期間は令和5年6月までだったかな。まあ工事が終わったとしても道が細いしガードレールもないので車の乗り入れはお勧めしません。
バイクなら行けちゃうかもですが。
北長門海岸国定公園
舗装路の突き当りに北長門海岸国定公園の看板が見えました。
ここでちょっと国定公園の豆知識。
北長門海岸国定公園は1955年(昭和30年)11月1日に国定公園の指定。長門市西部(旧・油谷町)と下関市豊北町の区域は西長門海岸県立自然公園であったが、1997年(平成9年)9月に北長門海岸国定公園に編入された。
へー。県立の自然公園が国定公園に編入されるなんてことがあるのね。世の中って色々不思議だわ。
さて、この看板のところは分岐になっていまして右は御覧のように山道、写真にないけれども左は細い舗装路が続いています。どちらに進めばいいのか登山案内図もあるのですが葛がかかって行先が見えません。
普通なら左の舗装路に逃げるところですが、ヤマレコで事前に調査して雲屏嶺という山があることと雲屏嶺から大浦岳に回れることを調べておいたので、たぶんこの分岐を右だなと山道を辿ることにしました。
結果的にこれが大正解。大浦岳に登るときには雲屏嶺を経由した右回りをお薦めしておきます。その理由は後ほど。
雲屏嶺
雲屏嶺(うんぺいれい)なんてまた不思議な名前の山ですが、雲(くも)が屏う(おおう)嶺(みね)と読めばとても詩的。地元で雲屏嶺(うんぺいれい)なんて呼んでるのか知らんけど。
北長門海岸国定公園の看板があった分岐付近こそ木が覆い細く湿った道に不気味さを感じましたが、そのエリアを抜けてしまえば快適な登山道へと変わりました。さすが国定公園だぜ。
山を回り込むと突然原っぱが目の前に。突然現れた僕の姿に驚いて鹿が二頭、ケンケーンと鳴き声を上げながら麓を駆け上がっていきました。ふっふっふ。また勝ってしまった。
ま、それは良いんですが、この原っぱは伐採の跡みたいなんですよね。国定公園って伐採OKなんだっけか?もしかして道間違えた?と悩んでるところに、道が直進と左に分かれてるんです。
こうなりゃもう行くとこまで行くしかないわ。直進!
チョイスした直進の道は原っぱを右に巻き、これで山の裏に出たらどうなるんだろうなーと悩み始めたところで、山方向に階段を発見。お!これなら雲屏嶺(うんぺいれい)に行けんじゃね?
このあたり巨石がゴロゴロしてるんですけれども、なんかそんなところから無理して生えなくてもって思うんだ。それにしてもこのあたりの落ち葉が気持ち悪い。それほど深くはないのですが湿っててマムシちゃんが出てきそうな雰囲気があります。岩には手をつかないようにしよう。
階段が切れてなんだか広場に出てきました。めちゃめちゃ平らで木の隙間も十分。奥にも左にも行けそうな感じです。そう言えばこの山に入ってから一度もピンテを見てないぞ。
ここは頂上なんだろうか。いや頂上はまだ奥か。まったく分からないので携帯を取り出してヤマレコで地図を確認しました。
え、左後ろに進むの?
GPSで位置と方向を確認しながら進むと三角点がありました。
標高287.8m、雲屏嶺の二等三角点。冠字選点番号は呂14(古田和三郎)で明治27年6月13日の選点。基準点名は阿川岳で、俗称なしになってますが国土地理院地図を見ても雲屏嶺です。
三角点から広場方向を写してみたのですが、それにしても雲屏嶺の山頂ってなんでこんなに平らで広々としてるんでしょう。この広場、面白いなーと歩き回ってるうちに方向感覚を失っちゃいます。
山頂は1つだけど下り路は360度なので山頂で迷うと致命的です。今回は完全に方向感覚を失ってしまっているのでGPSに頼って大浦岳へと続く道を探しました。これがまた意外な方向。
この大浦岳に向かう道ってのが最初に見た原っぱの上を横切る方向で進む道でした。原っぱの分岐は直進でも左でもここには出てきたってことか。
うん、なかなか楽しい道迷いだった。
雲屏嶺から大浦岳森林公園に続く道は上り下りが続きますがそれほどの高低差もなく森林浴気分で歩けます。道も大変よろしい。
おっと舗装路に出てきました。ここからは大浦岳森林公園になります。
大浦岳
大浦岳は大浦岳森林公園として開発されているようでここからはルンルンハイキングです。
自分がどこに出てきたかが分からないので、とりあえず舗装路を坂の上のほうに歩いてみました。
中央広場の看板があったので矢印が指し示すほうに歩てみると…
山頂にどんだけの広場だよ。この広場を無理に造成したんじゃなければとんでもない丘陵です。そう言えば雲屏嶺の山頂も平らだったし千畳敷も近いっちゃ近い。この辺りはそういう山の形になってるのかもしれないなあ。いやとにかく広いよ。
電波塔が見えるしあっちに行ってみます。
舗装路に戻って中央広場を過ぎ少し降りると池がありました。この池は人工っぽいかな。池の横にはトイレ。このトイレは目隠し効果抜群ですね。
公園施設の看板があったのでじっくり見てみました。あ、これ北長門海岸国定公園の分岐のとこにあったやつと同じじゃん。今なら道のつながりが分かるぞ。よし。ぐるっと回って山頂を取って見晴らし広場に行くか。
それにしてもこんなに素敵な公園なのに人っ子一人いないんです。聞こえるのは風の音だけ。このなんでもない景色が怖いです。
電線も通る近代的な公園をたった一人で歩いていると、世界に自分ひとりだけになったんじゃないかなんて錯覚に陥ります。耳がキーンとしてきます。
山道なら一人でも平気なのに。
大浦岳にはいくつかの電波塔が寄り合って立っていました。高さだけで考えると電波塔のあたりが大浦岳の山頂っぽい感じです。赤白の電波塔を見ながらカーブを曲がると山頂方向に道がありました。
羊歯の延びかけた広場を歩き回って三角点を見つけました。
標高268.4m、大浦岳の四等三角点。冠字選点番号は祥3(森藤広志)で平成4年5月28日の選点。基準点名は大浦岳で俗称も大浦岳。
最近のものなので基準点名も俗称も大浦岳でそこは面白みがありません。大浦岳の点の記で気になるのは選点時期。なんだか随分あたらしい気がするんです。
これ、あれかなあ。角島大橋の着工(平成5年9月)のために慌てて設置したとかそんな逸話が隠されてるんじゃないの?
大浦岳森林公園の見晴らし広場
最初のほうに大浦岳に登るときには雲屏嶺を経由した右回りをお薦めすると書きました。
雲屏嶺で不安におののき、森林公園の広場に驚き、四等三角点を無事取って、そしていよいよ感動のフィニッシュ!大浦岳森林公園の見晴らし広場です。
ここからの景色がもう絶景中の絶景なんですわ。
見晴らし広場自体も素晴らしいんです。芝生に木の緑に青空、落ち着いた東屋、ベンチの向こうに碧い海。この手入れの行き届いた公園が山の頂にあるなんて信じられます?
「この東屋はやまぐち森林づくり県民税を活用して作られたものです。」だそうです。やまぐち森林づくり県民税えらいぞ。下関市は準政令都市として独立採算でやってると思ったらやまぐち森林づくり県民税は使うんだな…なんてのはさておき
お待たせしました。
見晴らし広場の端に立ち
はるか海を眺むれば
阿川漁港の向こうに長羽山
長羽山の向こうに角島
間を渡るは角島大橋なりぃ
これは気持ちいー。去年見た天橋立に勝るとも劣らない絶景。
気持ちの上げ下げの最後に来る絶景、これがたまらんね。
なので大浦岳は右回りがお薦めなんです。
今日の話はこれじゃ終わらない。
ベンチに戻って再び景色を眺めていると
背後から風とは異なる音が聞こえた
近くに木はある
直撃は避けられるはずだ
そっと振り返ると遠くに黒い物体
タ、タヌキ!?
こちらの動揺に気が付いたか
奴が足を止めた
交錯する視線、互いに固まる
少し腰を浮かせて逃げる態勢を整えた
静寂がやけに長く感じる
ふいに奴は向きを変え
草むらに消えていった
ふぅ、なんてこった。クマどころかタヌキでも命懸けだぜ。